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なぜか日本では盛り上がらないHCM IT部門も人事のトランスフォーメーションは他人事ではない

edited by DB Online   2021/06/18 12:00

米国のHR Transformationと日本の人事改革の違い

 人事体制ついては、欧米、特に米国ではHR Transformationがブームになり、それをサポートするツールとしてHCMが導入されたのです。DXと同じように、ここでもTransformationです。日本では人事改革と言われますが、内容がかなり異なります。HR Transformation以前は、米国においても、人事の組織は機能別に分かれていました。給与、採用、労務、教育などです。HR Transformationが起こり、その体制が大幅に変わりました。その目的は、従来の機能の部分はより効率化や生産性を求め、それ以外では、事業部などのビジネスを人事面でサポートする、企業文化の醸成をリードすることです。

 そのため、人事機能組織のモデルは、CoE(Center of Excellence)BP(Business Partner)OPE(Operational Excellence)の3つの機能から成りたつことが多いです。CoEとは、人事機能で全グループに横断的にみて、企業グループの理念や哲学、行動規範やポリシー等の決定とその定着のためのコンサルタント的な役割を担うグループです。BPは事業部をビジネス成功のために人事面でサポートする部門で、部門ごとに専任者が割り当てられて、サポートしてくれます。私もお世話になっています。OPEは従来の機能別の組織がこれにあたり、効率性や生産性の向上を追求します。

 日本では、OPEがまだ中心で、人事機能の効率化や生産性向上にまだまだ力点が置かれているということです。また、これに伴いチェンジマネジメントも脚光を浴びています。チェンジマネジメントでは、「会社はどうあるべきかを考えるビジョン創造」「ビジョンをめざした戦略の構築」を重視し、現状にとらわれずゼロベースでビジョン・戦略を考え、既存の資産にも変革を求めます。まさにCoEがリードすべき分野です。

 繰り返しますが、HCMは、HR Transformation、チェンジマネジメントを企業が行うためのツールなのです。しかし、日本人は、傾向としてTransformationに弱いですね。

 また、最近、日本でも職能制度が注目されています。職務遂行能力によって社員をいくつかの等級に分類し、賃金の管理を行う制度のことで、私もマイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Instituteと、過去何度も職能制度への移行プロジェクトに巻き込まれて、キャリアの階段の定義や職務記述書を作成してきました。HCMは、キャリア全体を管理しますので、このような職能制度にとも相性がいいのです。ちなみに、グローバル企業にいて感じるのは、どの企業も大概、同じようなことをやるということです。人材の流動があるので、ある会社で成功したCレベルの人は、別の会社で同じことを実装してきます。HCMはまさにその分野で、Workdayが成長した1つの要素ではないでしょうか。

 アプリケーションの決定においても、日本と欧米の違いは大きいです。欧米ではもちろん人事組織は絡みますが、IT部門や経営も意思決定で重要な役割を果たします。それはそうですよね。人材が重要な資産なのですから、人事だけに任せないですし、かなり巨額の投資を行います。HCMアプリケーションを全社で導入するとかなりの投資金額です。日本では、人事が機能別組織なこともあり、人事のアプリケーションは人事・給与が中心です。どのアプリケーションを採用するかは人事が主導的な役割を果たします。しかも、人事がもつ予算の範囲で。それでは、なかなか戦略的なHCM投資もできないのではないでしょうか。技術的にみても、HCMアプリケーションは人事に関連するすべてのデータを格納して、活用しますが、人事・給与が別出しだと、データの移動や粒度の違いが発生して、一気通貫でデータを活用するのは困難です。ただここの原因の1つは、欧米のHCMアプリケーションベンダーは、日本の源泉徴収の制度や複雑な残業時間の処理に連動する必要のある給与アプリケーションの実装に苦労していることも挙げられます。

 ひと、もの、金、データ。これが間違いなく企業にとっての重要な資産です。ひとについて、経営課題としてHR Transformationで再度戦略を考えてみるものよいのではないでしょうか。



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著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

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