
富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第五回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。シリーズの第一部となる「DXチャレンジ編」では、「なぜデジタル変革なのか?」その勘所をデジタル推進部門やIT部門のみならず、経営者やリーダーも含めた企業の全社員に向けて実践経験を踏まえて紹介します。
トレンドに振り回されない
世の中のトレンドを追いかけて我先にと新しい概念を伝えて来たメディアは、実はトレンドの正しい理解を妨げるケースがあることは否めません。いわゆるパズワードなのですが、ITの世界でも過去にビックデータやクラウドコンピューティング、コ・クリエーショなど、が代表例といえるのではないでしょうか。ウキペディアによると以下のように解説されていました。
バズワード(英: buzzword)とは、技術的な専門用語から引用したり、それを真似た言葉で、しばしば、素人がその分野に精通しているように見せるために乱用される、無意味だが、かっこいい、それっぽい言葉のことである。また、特定の期間や分野の中でとても人気となった言葉という意味もある。権威付けされたり、専門用語や印象付けるような技術用語。コンピュータの分野でよく使われるが、政治など広い分野で使われる。1940年代半ばのアメリカのスラングが起源
数年前からデジタル変革(DX)もその兆候が出始めていますが、面白おかしく市民を扇動するメディアに騙されるのではなく、正しく物事を捉える必要があると考えます。そのためにもデジタルビジネスの世界で語られてきたさまざまなデジタル関連用語についても辞書的な意味合いだけでなく実務に照らし合わせた理解が必要だと考えています。今回は、このデジタル化の進展やデジタル変革(DX)に関わる用語について整理してみたいと思います。
デジタル化の進展
デジタル変革(DX)の取り組みは、よく「デジタルジャーニー」と表現されるように企業にとって長い旅路となります。長い旅路を出発するためには、まず目的地を定め、目標としての旅路と経路に対する方針を立てなければなりません。DXの全体像を理解し、向かうべき方向について経営者やDX推進者だけでなく、全従業員が認識を共有することが求められます。
みなさんは、東京都庁のように二棟からなるツインビルの良いところは何だかご存知でしょうか? 1つのビルが上部で2本に分かれるツインビルは、上部が軽くなるので地震に強く、途中で構造が変わることで揺れ幅が変わり、長周期地震動も起こりにくくなるそうです。
これをビジネスに置き換えた場合、既存ビジネスと新規ビジネスという2つの柱があるからこそ、その企業のビジネスが拡大するとも考えられます。これはまさに「両利きの経営」の実践であり、事業再構築する場合に意識しなければならない視点です。既存のビジネスをITの活用で深化し、より良くするためにまずは、紙の情報や仕事の一部をIT化する「デジタイゼーション」が必要になります。より一層の進化には、デジタル技術やデジタル化された情報を活用した「デジタライゼーション」も必要になります。

一方、新規ビジネスの探索は、新しいビジネスと市場を開拓するためにデジタル技術やデジタル化された情報を活用し、企業がこれまで実現できなかった新たな価値を創出します。これらの活動を「デジタルイノベーション」と定義することもできます。また、DXを進めるためのベースとなる活動として、レガシーシステムの刷新に加え、企業文化や人のマインドセットを変える活動は欠かせません。
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柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)
香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...
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