AWSが考える“最速移行”を実現するための方法
本セミナーの基調講演として、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社とヴイエムウェア株式会社がセッションに共同登壇。はじめに、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ISVパートナー本部 シニアパートナーソリューションアーキテクトの豊田真行氏が「仮想化環境上のアプリケーションをクラウドへ最速で移行を実現する方法」をテーマに、仮想基盤で動くシステムのクラウド移行を最速で実現することができる「VMware Cloud on AWS」について紹介した。仮想基盤上のシステムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行できない理由としては、「AWS活用のノウハウがない」「既存アプリケーションの改修ができない(IPアドレスも変更できない)」「クラウド移行時にシステムを止められない」などが多くの企業から挙げられる。これらの課題を解決するクラウド化の方法が、VMware Cloud on AWSだと豊田氏はいう。
AWSへの移行は下記「7R」の方法があり、要件により組み合わせて採用することとなる。
- リロケート(Relocate)
- リホスト(Rehost)
- リプラットフォーム(Replatform)
- リアーキテクチャ(Re-architecture)
- リパーチェス(Repurchasing )
- リタイヤ(Retire)
- リテイン(Retain)
VMwareとAWSが共同で開発したVMware Cloud on AWSは、7Rの中でも最速の移行方式となるリロケートにあたる。Amazon EC2ベアメタルインスタンスを専用で確保し、その上で「VMware Software-Defined Data Center」(SDDC)が利用できるため、オンプレミスで培ってきたVMwareのノウハウはそのまま利用できる。
基盤部分の管理とサポートは、VMwareが1つの窓口でサポートする。また、ハイブリッド構成の場合も同社が一貫したサポートを提供し、管理も1つのコンソールから一元的にできるという。さらに、移行作業そのものも「VMware HCX」を使うことでGUIによって容易に実現できる。「vMotionを使えばアプリケーションの変更も必要ありません」と豊田氏。L2延伸で同一ネットワークにあるような構成となるので、IPアドレスの変更も必要ない。これらでAWSのノウハウがなくても容易にクラウド化ができ、移行の際に既存のアプリケーションを改修できないという課題も解決されるだけでなく、迅速な移行スピードにより止められないシステムにも対応できる。
またAWSへの移行により、ハードウェア費用だけでなくライセンス、運用管理費用などを含むTCO(Total Cost of Ownership)全体の削減が期待できる。物理ホストの障害も自動で復旧するなど、エンタープライズクラスのSLA(Service Level Agreement)も実現され、ストレッチクラスターを使えばマルチAZ(Availability Zone)で高い可用性も確保可能だ。また、「vSAN」のストレージ環境では暗号化が標準であり、鍵管理は「AWS Key Management Service」(AWS KMS)を使うことで高いセキュリティ性を確保されるなど、これは2社による共同開発ならではだ。
その上で「Amazon RDS」「Amazon S3」などAWSの各種サービスとも容易かつ高速に連携できる。「すべてをVMware Cloud on AWSに移行するだけでなく、柔軟にAWSのサービスと組み合わせられるのは大きなメリットです」と豊田氏。VMware Cloud on AWSは、現実的なステップを踏んだDXシナリオを進める際に最適な選択肢になるという。
「VMware Cloud on AWS」の活用メリット
「VMware Cloud on AWSは、継続的に機能強化を続けている」と説明するのは、ヴイエムウェア株式会社 クラウドサービス事業部 シニアプロジェクトマネージャーの荒井利枝氏だ。2021年10月に大阪リージョンでのサービス提供も開始され、東京・大阪での災害対策構成も可能になるなど、今後もますますVMware Cloud on AWSの活用シーンが増えることが予想できる。他にも「VMware Cloud with Tanzu Service」による、Kubernetesのサポートが強化されているという。
「Kubernetesのサポートにより、ハードウェアやソフトウェアの管理はVMwareに任せて、ユーザーはKubernetesの活用に集中できます」と荒井氏。VMware Cloud on AWS上に従来型の仮想マシンだけでなく、Kubernetes/コンテナ環境を同時に稼働させることができ、既存の仮想基盤環境のシステムをマイクロサービス化する際に、まずVMware Cloud on AWSでAWSに移行した上で、適宜アプリケーションをマイクロサービス化するアプローチも容易となる。また、インスタンスタイプも高性能になったり、2ホスト構成も選択できるようになった。これにより、コストが33%低くなるなど、スモールスタートもしやすくなっている。
もう1つ「VMware Cloud Director Service」の対応もある。これによりマルチテナントベースの利用が可能となり、MSP(Managed Service Provider)パートナーの独自サービスとして提供が開始された。他にも、VMware Cloud on AWSをリカバリサイトとしてコスト効果高く利用できるDRサービス「VMware Cloud Disaster Recovery」の提供だけでなく、「VMware NSX Advanced Firewall」がVMware Cloud on AWS上で利用可能になったことで、顧客の要件にあわせたセキュリティ機能の提供ができるようになるなど、ニーズに合わせた機能を継続的に追加・強化している。
また、荒井氏は「VMwareで動いている既存のワークロードや運用管理についても、そのままの状態でクラウドに移行できます」と述べる。その上でKubernetesも活用でき、AWSのサービスとも連携できるという優位性を改めて強調した。加えて、導入の際にはパートナーエコシステムも重要となる。これを支援するパートナーのコンピテンシー制度もあり、既にグローバルで550社以上、日本でも多くのパートナーが活用支援を行っているという。「ぜひパートナーから、どのようにVMware Cloud on AWSの活用が行われているか話を聞いてみて欲しい」として荒井氏はセッションを締めくくった。