VUCAの時代の未来予想図
2030年、こんな朝を迎えている人がいるかもしれない。マクニカ 王原聖雄氏は1つの未来予想図を示した。
一日の始まりは身体情報のスキャンから。睡眠中の脳波、脈拍、血圧、体温などを読み取り、AIが体調に合わせた朝食レシピを導き出す。朝食を作るのはフードプリンタだ。ゲル化された栄養分を食材として、お好みの形で出力される。将来のフードプリンタは立体を出力するだけではなく、時間とともに形状、色艶、香りも変化するようになっているという。
こうした未来は指数関数的に発展していくエクスポネンシャルテクノロジーを組み合わせて現実化されていく。具体的には次のようなものがある。
現在成長中で身近にあるのがクラウドサービスだ。多くの企業が業務アプリケーションをクラウドのSaaSに移行したり、オンプレのインフラをIaaSに順次置き換えたりしている。ブロックチェーンもある。投機の対象としてだけではなく、最近ではNFT(非代替性トークン)でデジタルアートの所有や売買への活用も期待されている。「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点で、これからの基盤になるだろう」と王原氏は言う。
萌芽の段階にあるのが量子コンピューティングと脳インターフェースだ。前者は渋滞、天気、災害などをより正確に予測するためのコア技術となる。後者はユーザーの脳の状態に合わせてコンテンツを変えていくもので、ゲームや動画の配信会社が取り組んでいる。例えばユーザーが退屈してきたら難易度やシナリオを変えたりする。
新たな領域となりそうなのがeスポーツやライブエンターテイメント。最近話題のメタバースもここに入る。新しい技術を支える基礎領域には、ナノ光学(ナノテクノロジー)や植物や微生物の特徴を取り入れるバイオミメティクスがある。
最先端技術には大いに期待できるものの、ビジネスに採り入れるなら安全性が気になるところだ。特に日本ではリスクを最小限にすることが好まれ、そこから高い品質や高い競争力をもたらしてきた。
しかしVUCAの時代となり、環境変化への対応力が求められるようになると、全てのリスクをコントロールしようとするのは適切ではないだろう。複数のテクノロジーやサービスを組み合わせるならなおさらだ。王原氏は「最低限の安全性を担保しつつ、先に進めていくことが重要になります」と話す。