パーパスと「三方よし」
「三方よし」という言葉があります。近江商人の経営哲学のひとつとして、広く知られています。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方です。多くの日本企業の経営哲学にも、この考え方は根付いているのではないでしょうか?
しかし、世界の人口問題、深刻化する環境問題などにより、SDGsの重要性がまずます高まる中、「三方よし」では、経営哲学が足りなくなってきているようです。『BCG 次の10年で勝つ経営
企業のパーパス(存在意義)に立ち還る』(日経BP)では、次のように述べています。
ここで言う「世間によし」は、企業論理的に「世間様に顔向けできないことはしない」という意味での強いコミットメントではないか。今日的な意味でのソーシャル、すなわち「世間(社会)に積極的に関与して、企業側の活動にその改善を試みる」という意味合いとは、どうもズレがありそうである
この社会に積極的に関与するというところが、企業は利益を追求してステークホルダーに貢献することを土台に、主に求められている時代なのではないでしょうか。社会への積極的な貢献です。
関連する言葉に、ESG投資があります。ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮した投資のことを指します。財務だけでなく企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGsと合わせて注目されています。
このESGを達成するため企業には、明確なビジョンが必要です。そもそもビジョンがない企業は、生き残れないのです。私が1993年にマイクロソフトに入社したとき、「世界中にある全ての机と家庭にコンピュータを届ける」とうビジョンがありました。社内はそのビジョンに向けて、私含めて社員は一生懸命に仕事をしました。私はエンタープライズ市場の製品の担当でしたが、プレゼンの最初はこのビジョンを熱く語ったものです。ビジョンは、ある意味、企業の羅針盤なのではないでしょうか。ビジョンがあり、戦略があり、そして、戦術があります。