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停滞するアジャイル開発:内製と外注とのハイブリッドモデルで再起動を

 なぜ日本ではアジャイル開発が浸透しないのか――何年も続けられてきたこの議論。今回はSIをめぐる体制、ビジネスとテクノロジーのノウハウ、そして内製化と外注のハイブリッドによる開発という視点から考えてみたいと思います。

アジャイルが浸透しない日本のIT

 アジャイル開発は、経済産業省の『DXレポート2.1』の「デジタル産業と既存産業の比較」の中で取り上げられています。同レポートでは、市場変化への迅速な対応に必要なデジタル産業のメソドロジーとして、「アジャイル・内製化・DevOps」の3つを挙げているのです。特にアジャイル開発は、内製化がカギだと思います(逆かもしませんが)。

要望に合わせてサービスを迅速に実現するためには、競争の差異化要素とならない部分はなるべく作らず、既存の仕組みを組み合わせることにより実現することが重要となり、費用を抑えることにもつながる。また、小さく作り、迅速にスケールすることや、その中で顧客の変化への即座の対応が重要になる。これらを支えるクラウド技術や、アジャイルでの内製開発、DevOpsといった手法の活用が今後さらに重要となる。(経済産業省『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』)

 私がアジャイル開発と出会ったのは、2006年から2007年にマイクロソフトでVisual Studio 2007の製品マーケティングに関わったときで、もう15年も前のことになります。その時点で、すでに海外ではアジャイル開発は一般化しつつありました。日本の現状を見ると、モバイルアプリケーションやコンシューマ向けのWebアプリケーションでは、アジャイル開発が浸透してきていると思えます。モバイルアプリケーションでは、頻繁に更新が必要だからといえます。その一方、エンタープライズITの分野ではまだまだといえるのではないでしょうか。

 IPAの『DX白書2021』[※1]の「新しい価値提供を実現するための手法」を見ますと、アジャイル開発の日米の活用状況が比較されています。それによると米国では、「全社的に活用している」が25.2%、「事業部で活用している」が29.8%と半数以上を占めています。日本では、「全社的に活用している」が4.3%、「事業部で活用している」が15%と、進捗はしていますが、米国に大きく水をあけられています。この白書では、アジャイル開発と、デザイン思考、DevOpsも比較されていますが、これら3つは似たような傾向を示しています。この3つが、米国ではセットで活用されている姿が浮き彫りになっていると思います。「顧客に新しい価値提供をするためには、適切な開発手法を選択し活用することは極めて重要である。IT部門と事業部門が連携することによってデザイン思考などの活用促進が望まれる」と述べています。

[※1]DX白書2021

内製化が出来なかった日本のIT

 私は、普段、ERPなどのコア業務アプリケーションの世界にいますが、こうしたアジャイル開発が浸透しているという感覚はないです。残念ながら、一部の企業の採用にとどまっている印象です。ユーザーのニーズを聞きながら段階的にアプリケーションを成長させていくこのモデルのほうが、ビッグバンでアプリケーションを導入するウォータフォール開発より、エンドユーザーに使われるシステム、そして、リスク回避の面で優れています。ウォータフォール開発では、プロジェクトの「1つのスプリント=ビッグバン」の開発が大きく複雑になり、時間がかかるため、ソフトウェア品質面の懸念と、Go Liveしたときにニーズの変化が起きて使いものにならないというリスクがあるからです。ユーザーは、利用しないと本当の評価はできないものです。後だしで言われても、手直しは大変です。アジャイル開発のスプリントは、PoCのようなものです。アジャイル開発は、作り、検証するPoCを積み上げていきます。PoCの有効性は多くの方に理解できると思います。ビジネスを取り巻く環境も急速に変化しているので、会計のような長期の耐性が問われるシステムは別として、現代のアプリケーションは、変化にあわせて進化させていく必要があります。そのような場合、ウォータフォール開発は適合しません。

 なぜ、エンタープライズ市場でアジャイル開発は浸透していないのでしょうか?

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北川裕康(キタガワヒロヤス)

35年以上にわたり B2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Inforなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などの要職を歴任。現職は、クラウドERPベンダーのIFSでマーケティングディレクター。...

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