DXを機に会員企業数が増加
──エンタープライズIT関連の団体は運営と継続が課題になりますが、JDMCは長年、会員企業数を伸ばしていますね。発起人の方のパッションで成長してきたと聞いています。
大西:私自身は現在リアライズという会社の社長ですが、新卒入社のNTTデータ通信(現NTTデータ)の時代から、社内ベンチャーとしてデータマネジメントの事業を起ち上げ、この事業に注力してきました。設立したのは2011年4月。東日本大震災の1ヵ月後でした。当時は「データ活用なんてITのツールを入れれば何とかなる」という思い込みがありました。「勘と経験こそが大事、データなんか見ない」と公言する経営者も多かった。そこで私を含め数人の有志が集まり、ベンダーとユーザー企業の23社で設立したのです。現在は参加団体は270社を超えました。
IT関連の団体はベンダー企業だけとか、ユーザー企業だけとかが多くて、両方参加できる団体もなんとなく主従関係があるように思うんです。ベンダー企業がすごくユーザー企業に気を使うというような。そうではなくて、両者が一緒に机を並べて知見の交流をしながら、オープンにデータマネジメントを促進していこうというのが基本方針です。
──11年続けてこられて、会員が増える分岐点のようなものはあったのでしょうか。
大西:コンスタントに増えてきたと思いますが、やはりここ数年のDXの影響は大きいですね。以前は積極的に勧誘をしていましたが、今は企業の方から入会の問い合わせがあります。DXを推進しようと思っても、結局社内の基幹系のデータや顧客のデータの管理がばらばらで何もできず、信頼できるデータを整備することの重要性に気づいた企業の方。もう1つは、IT部門としてデータマネジメントを進めたいのに、経営層から理解されないので、どういう風に説得したらよいかという悩みから来られる方などです。
──具体的な活動内容を教えて下さい。
大西:主に研究会やコミュニティ活動が中心です。研究会のテーマとしては「AI・データ活用のためのコンプライアンス」「データマネジメントの基礎と価値」「MDMとデータガバナンス」「マーケティングシステム活用」。「オープンデータ活用」など完全な目的志向で、コミュニティは、エンジニアや若手による勉強会など自由なテーマを設定しています。研究会には、延べ200名の会員が参画して、ユーザーやベンダーといった企業の枠を超えた「ガチ」の研究会活動をおこなっています。また合宿や大学生向けの勉強会や読書会、他社事例研究やTOPインタビューなどもおこなっています。
JDMCの会員企業の方は、新興ベンチャー企業よりも、どちらかといえば日本を代表する大手企業やそのIT子会社が中心なので、エンジニアコミュニティのようなものに慣れていない方も多いので、そうした方にも参加しやすい場を提供することを念頭においてきました。また、コミュニティでは、参加企業の側からなるべくリアルに近いデータを提供していただき、現場に即した実践的なデータ分析の結果を役員にプレゼンするというところまでを一連の活動にしています。
年次カンファレンスとデータマネジメント表彰
──年次カンファレンスと表彰についてはいかがでしょうか?
大西:毎年おこなっている「データマネジメント表彰」が好評です。データマネジメントは地味なので、なかなか日の目を見ないのですが、この表彰を通じて、経営層や社内外の認知が得られ、関係者のモチベーションにもつながったという声をいただきます。これまで8回実施し、66社を表彰してきました。今年も3月の年次カンファレンス(データマネジメント2022)で表彰をおこないますが、受賞企業はその前に公開予定です。
──表彰に取り上げられる事例は、通常のメディアやベンダーの公開情報からは見つからない貴重な内容です。事例の発掘はどのようにされているのでしょうか?
大西:はじめの頃は、事務局の側から各企業に自薦・他薦をお願いしていたのですが、最近はベンダー企業、ユーザー企業の側から「ぜひ取り上げてほしい」と紹介されるようになりました。ベンダー企業からの事例であっても、決して製品やサービスの紹介ではなく、取り組みの課題や成果をエビデンスを含めた内容をいただくようになりました。同業他社の事例の受賞を見られたユーザー企業の方から「うちもぜひ応募したい」と応募されることも多い。こうした応募の中から、JDMC表彰部会のメンバーが複数名でしっかり審査して選定しています。
──他にも成果物の発表として出版物も発行されていますね。
大西:「データマネジメントの基礎と価値」研究会の成果物として『データマネジメント概説+ケーススタディ3部シリーズ』を発行しています。また近刊では、「AI・データ活用のためのコンプライアンス研究会」の研究成果として『攻めのデータ活用の「つまずきポイント」に備える49のチェックリスト』(日経BP)を出版します。法律に違反していないデータ活用であっても倫理的に問題があると指摘され、いわゆる炎上状態になる事例が相次いでいます。良かれと思って始めた、画期的な新サービスが中止を余儀なくされる場合もあります。本書で、データ活用におけるコンプライアンスにおいて起きがちな問題を事前に洗い出せる「倫理フレームワーク」と呼ぶツールを提供しています。
──今年のカンファレンスの見どころについてはいかがでしょうか?
大西:「データマネジメント2022~データを制するものがDXを制す~」というテーマで3月10日に開催します。前回よりも開催規模を拡大し、早朝8時30分から18時30分まで全5トラックを設けて実施します。登録すれば参加費用は無料なのでぜひご参加ください。「衛星ビッグデータや気象データ」や「物流コストインフレ時代の企業戦略」についての基調講演の他、全13のユーザー企業の事例を予定しています。ポイントとしては、IT部門だけでなく、ビジネス部門との協調でデータをビジネスに活かした内容などを重視していることです。
──事例を発表されるユーザー企業はどのようなメリットを感じておられるのでしょうか?
大西:このイベントに登壇したことで、メディアへの露出が増えたというスピーカーの方が多くいらっしゃいます。さらに「データを積極的に活用している企業」とPRできることにより、IRや中途・新卒のリクルーティングの上でも効果があった例もあるようです。われわれの思いとしては、参加者と同時に、発表者の方にもメリットを感じていただき、最新かつ実践的な事例を失敗事例も含めてお届けしたいと思います。オンラインでライブ配信ですが、事前登録いただいた方は3週間のアーカイブ視聴もできます。盛りだくさんのセッションコンテンツなので、ぜひご参加いただければと思います。