中小規模の現地法人にフィットする業務ソフトが求められてきた
福井氏は、大学卒業後の1993年、ビジネスブレイン太田昭和に入社すると約10年間、会計システム開発プロジェクトに参画。当時はパッケージソフトがなく、顧客ごとに、基本構想から要件定義、開発・テスト、本番移行・本稼働を担当するシステムインテグレーションを行っており、その間にSAP資格も取得したという。その後、IBM、IBMビジネスコンサルティングサービスに出向し、10年ほどSAP導入プロジェクトに参画する。
「日本企業の本社にSAPを導入するプロジェクトに会計コンサルタントとして参画し、途中から中国・香港拠点へのSAP展開も担当していました。当時、中国で生産したモノを香港の物流会社を経由して日本の本社に売り、さらに日本の販売会社が売るという一連の流れをSAPですべて可視化できる。その凄さを覚えています」(福井氏)
国ごとの商習慣や法制度、オペレーションが違っていたとしても、SAPがすべての拠点で導入されれば統合管理できる。しかし、問題はコストだ。日本法人の場合、独自カスタマイズもあって本社への導入だけでも高いコストが発生するが、複数拠点を持つ企業にとっては、さらに大きくのしかかっていた。
福井氏は2012年、マルチブック(旧社名:ティーディー・アンド・カンパニー)に入社し、SAP導入プロジェクトに参画。フィリピン拠点のCFOを経て、2014年に「multibook」事業担当となった。multibookは、大手企業の顧客から「中小規模の現地法人にフィットする業務ソフトを探してほしい」と相談を受けたことがキッカケで開発されたクラウドERP。当時、要件を満たすパッケージソフトが存在しなかったのだ。
2014年に企画・設計し、2015年に海外拠点向けクラウド型会計・ERPサービスとして誕生。2022年12月時点では、マネジメントコックピットやロジスティクス、固定資産管理、リース資産管理、従業員立替経費精算管理、国要件対応などを追加実装し、300社以上が活用しているという。