グループ51拠点のファイルサーバーが抱える“3つのリスク”
日本カバヤ・オハヨーホールディングスグループのオハヨー乳業は、プリンやヨーグルトなどのチルド食品を主力商品とする食品メーカーだ。同グループには、同じ食品製造業である「カバヤ食品」や、住宅メーカーの「ライフデザイン・カバヤ」など、様々な業態の13企業が属する。リンク&リンケージは、そのなかでロジスティクス事業部を中心とし、PSI(生産・販売・在庫の計画)事業部、IT事業部からなる会社だ。IT事業部ではオハヨー乳業のIT分野を長年担当しており、2022年のオハヨー乳業のファイルサーバー更新を機に、グループ全体のファイルサーバーの統合を実施した。
難波氏はまず、ファイルサーバー統合前の環境の課題について説明した。それまでは、工場、支店、営業所などの各拠点にファイルサーバーを配置し、DR対策としてデータセンターにも同様の構成を配置し、データセンターからAzure環境にバックアップを行っていた。しかし、グループの拠点が51あるため、セキュリティリスク、災害リスク、障害リスクが課題となっていた。
セキュリティリスクは、拠点が多数あることによる防犯上の問題に加え、セキュリティインシデント発生の多いWindows OS利用を挙げた。それまでの5年間の運用マルウェア被害などはなかったものの、脆弱性の緊急対応をすることがあり、調査やサーバーの再起動にともない、業務が一時的に停止することがあったという。同じ環境を維持するには、保守のためにユーザーが時間を調整し、管理者が適切にアップデートを実施することになる。
災害リスクは、近年増加傾向にある自然災害や人的災害の火災・停電などによるもので、2022年にグループの拠点に影響するエリアでは、30件の大規模自然災害、5件の人的災害が発生した。特に影響が大きかったのが2018年に発生した「平成30年7月豪雨(通称、⻄日本豪雨)」だ。グループ会社のカバヤ食品岡山工場が浸水し、ファイルサーバーは浸水被害を免れたものの、⻑時間電力が喪失。ファイルサーバーが利用できないためDRサイト[1]をアクティブにしたが、ファイルの巻き戻し問題が発生して利便性が低下してしまった。この問題の抜本的解決は難しく、サーバーをなるべく高い位置に設置するなどの対策を継続しているという。
障害リスクは、拠点におかれたファイルサーバーの故障などの問題だ。ファイルサーバー数は63台あり、Windows OSのパッチ適用などによる再起動やサーバーの性能問題によるスナップショットの破損や故障が課題となっていたのだ。これまでに、OSの大型アップデートによるブルースクリーンループが発生し、ファイルサーバーの再構築をせざるを得ない状況が2件発生している。再構築には数時間を要し、ディスクの高負荷状態が続いたせいでファイルのリカバリできない事象も起きた。
その他、発生件数は少ないが、“番外編”として次の3つの例も紹介された。
- 夏場の猛暑に営業所のメンバーが外出する際にエアコンをオフにしてしまい、室温上昇でサーバーがダウンしてしまう
- 営業所の清掃の際に誤ってサーバーの電源プラグを抜いてしまう
- キーボードの上に書類など山積みされた荷物がサーバーに触れて誤動作を起こしてしまう
[1] 災害などで主要なITシステム拠点での業務の続行が不可能になった際に、緊急の代替拠点として使用する施設や設備のこと。DRとはDisaster Recoveryの略