エンタープライズ系ベンダーの生成AIの動向としては、谷川さんの週刊DBオンラインのこちらの記事がイチ推しです。
- 加速するエンタープライズITの「生成AI」競争──主要ベンダーの思惑と動向を探る(2023/07/11公開)
ここからは、この半年間の各社の動向の記事から比較的読まれたものをご紹介します。
ChatGPTの登場以降、IT業界は毎日AIの話で持ち切りとなりました。当初はパーソナルなビジネスツールとして活用はできるものの、ChatGPTで生成される情報の真偽性や信頼性の観点から企業ITに導入するには慎重であるべきだとする議論が多くありました。
そもそも昨年の秋の時点で、生成AIがこれほど高まりを見せるとは予測されていなかったように思えます。以下の記事の昨年秋のガートナーの発表では、今後のトレンドとして、生成AI(Generative AI)という言葉は含まれていませんでした。関連するところでは、「Transformerモデル」が6位に登場しているのですが、自然言語処理(NLP)の分野での革新的なテクノロジーという位置づけでした。
- ガートナーのアナリストが選ぶ、データサイエンスと機械学習の最新トレンド10選(2022/11/02公開)
様子が変わったのは年初から、GPT-4が発表されて以降、MicrosoftのOpenAIへの巨額投資、Bingの刷新、対抗するGoogleのBardが発表されて以降、エンタープライズの主要ベンダーも堰を切ったように、生成AIに関する発表が行われました。
戦略発表系
特に今年はコロナでしばらく中断していた主要ベンダーの海外でのカンファレンスが復活したこともあり、3月以降はどのベンダーも「生成AIとの連携」一色の様相でした。
印象的だったのは、LLM(大規模言語モデル)による従業員や顧客との会話系ソリューションだけでなく、ERPやマーケティング、人事などのどちらかといえば、容易に改変されないデータや基幹系に連携するようなサービスを提供する、SAPやSalesforce、SASなどのベンダーもこぞってAI戦略を発表したことです。
以下が今年、上半期のベンダーの生成AIの発表関連のレポート記事やニュースです。
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SAP、マイクロソフトと共同で人事分野に生成AIを適用──Sapphire 2023でCEOが発表(2023/05/18公開)
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「SAS Innovate」でグッドナイト博士が語ったViyaの今後、ChatGPTとの関係、AI倫理(2023/05/11公開)
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Snowflakeが発表したジェネレーティブAI 第一弾は非構造化データからの情報抽出(2023/07/13公開)
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Googleのエンタープライズ向けジェネレーティブAI、「Gen App Builder」とは?(2023/06/01公開)
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日立製作所、Generative AIセンターで生成AI推進 「グループ32万人活用」に向けた施策とは?(2023/05/16公開)
解説系
今年前半の印象では、まず「連携を開始」「体制を構築中」という内容が多かったと思います。ベンダーが行う解説的な記事も人気がありました。ChatGPTの「脱獄」や「ハルシネーション(幻覚)」などに企業がどう対応するかという観点からの記事も注目されました。
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【徹底解説】今知るべきChatGPTの「脱獄」手法による攻撃とは?(2023/06/07公開)
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【AWS 生成系AI勉強会】基盤モデルの活用とカスタマイズ、AIアプリ開発支援サービス「Amazon Bedrock」について(2023/07/06公開)
実践系
各ベンダーの生成AIに関しての全体的な方針の発表は一通り済んだ感があります。そろそろ独自の基盤構築や実践事例の発表が出てくるでしょう。なかでも自社の業務データをどのようにAI基盤に組み込むか、情シス部門が生成AIを導入する上での要点やガイドラインについての関心が高まっているように思います。
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アクセンチュアが推進する「EnterpriseGPT」とは?プライベート型ジェネレーティブAIの構築と運用の勘所(2023/06/21公開)
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【情シス担当者のChatGPT入門】設定さえ変えれば社内利用は問題ない? 規定違反となるケースも(2023/07/12公開)
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【東京メトロの“現場のプロ”に宿る「課題意識」と「チャレンジ精神」がAI内製を突き動かす(2023/06/06公開)
未来系
さて、ここまで各社の動向を見ていると、かって「AIの巨人」であったあの企業が気になります。そうです、AIのテクノロジーをリードしてきたIBMです。10年ほど前のWatsonについては、当初IBMはAIという呼称を慎重に避け、コグニティブ・コンピューティングと称していましたが、その頃はAIブームの筆頭株だったはず。5月には「IBM watsonx」を発表していますが、生成AIブームの中では少し影が薄い印象があります。
とはいえ、そこはIBMです。「その先」のテクノロジーである量子コンピューティングのロードマップを発表しています。
ひょっとしたら「AI×量子コンピュータ」の未来も迫りつつあるのかもしれません。
※本ブログは今後も記事を更新・追加していく予定です。