ニトリの内製は「深い業務理解×IT技術」
ニトリは1967年に創業、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマンを掛け声に、拡大を続けてきた。家具・インテリアを扱う「ニトリ」に加え、インテリア雑貨「デコホーム」やアパレル「N+」などを展開、2022年よりホームセンターの島忠も傘下に入った。店舗数は現在、海外を含めると920店舗以上。売上高は9480億円に達しており、買上客数は1万5400万人、アプリ会員は1601万人(2023年3月末時点)という。中長期計画の下、2032年には3,000店・3兆円の実現を目指している。
製造物流IT小売業を掲げるニトリは、製造から営業所配送まで自前主義のビジネスモデルを持つ。「ここまで徹底的にサプライチェーンをコントロールしている会社は、世界的にも類を見ないのでは」と荒井氏は胸を張る。
ビジネスモデルが自前主義なら、ITも自前主義だ。その特徴を荒井氏は、「深い業務理解とIT技術の掛け合わせ」と表現する。「現場業務をわかっている社員が自ら要件定義をすることで、あるべき姿から逆算したシステムを起案できる」(荒井氏)。
そのようなニトリの内製システムは、ステップ数にして1578万。大手のコンビニが500万ステップと言われるので、実にその3倍となる。荒井氏によると、「8~9割の領域はフルスクラッチで基幹システムをコーディングしている」とのこと。自社でコントロールすることにより、「1日平均7.5件のリリースがある」など高速なリリースを実現している。
このようなスピードに加え、人材活用、ノウハウ蓄積も強みと荒井氏は述べる。現在新卒採用は総合職とIT人材は別で行っているが、総合職採用の場合でも、配置転換教育という考えのもと、情シスへの配属があるという。どちらの場合でも、まずは店舗や物流などの現場での経験を経ての配属となる。これが現場の課題の深い理解につながっているというわけだ。上流からシステム戦略までコンサル会社に任せることなく可能な限り自社社員で行うことで、ノウハウを社内に留保し、情シス組織の進化につながっている。
ニトリは1996年より内製システム開発を開始し、グループが成長する局面でシステムも構築や改廃を繰り返しながら進化してきた、と荒井氏。先の36期連続増収増益の記録達成に、「ITの貢献も少なからずあったと自負している」と述べた。