「『小さく始めて大きく育てる』IBM のSOA 導入を成功させるアプローチ(前編)」はこちら
中長期的な視点を持ちSOAは小さく始める
SOA を成功させようと考えた場合、ビッグバン的にシステムをSOA で一気に連携させるほうがROIは高くなり、その効果も早く現れるかもしれない。
とはいえ現実的には事業部ごとに業務プロセスや、OS やハードウェア、ソフトウェアの環境も異なれば、IT予算の使い方も異なる。そのような状況では、全社規模の共通基盤を最初に作り、それを用いてシステムすべてを連携させるのは容易ではない。まずは小さな単位でSOA化を実施し、ユーザーにも理解しやすい効果を早い段階から提供することが重要だ。
ユーザーが何らかの恩恵を受けられなければ、そのための予算はなかなか獲得できない。逆に、ある部署のユーザーがSOA化を実現したことで大きなメリットを享受したことがわかれば、隣りの部署もそれに相乗りしてメリットを得たいと考えるのが普通だ。そういった部署を順次取り込んで、最終的に全社規模へと広げていく。ユーザーの成功とともに進めていくことができれば、SOA の効果を企業も理解しやすくなり、継続的にSOA に取り組むことができるだろう。
ビジネスプロセスとITシステムのレイヤを分ける
このように小さくSOA を進めて成功に導いていく際には、ビジネスプロセスのレイヤとITシステムのレイヤを分ける必要がある。そうすることで、IT 全体のコントロールが情報システム部門に戻ってくるのだ。
例えば、発注単位が変わった、新しい取引先が追加されたといった新たな要件が生じると、ユーザーはそれをすぐにITシステムに反映してほしいと情報システム部門に要求する。サイロ化された(外部と連携しない個々に独立した)システムでは、それを軽やかにはこなせる状況にはないので、要望を順次聞き入れて、IT システムを改修していくことになる。これでは、常にメンテナンスしているような状況となり、多くの場合はユーザーからの要求のバックログも溜まり続けていくはずだ。
こうした状況では、ユーザーが満足するものはなかなか提供できない。発注者である情報システム部門が常に仕事に追われている状況なので、システムの構築を依頼されたベンダーも言われたことだけを実現することになってしまう。
これでは、ユーザーの満足度は低く、なおかつ情報システム部門もただただ目の前の課題を解決するのに時間を費やすこととなる。ユーザーにとっては、ITシステムの裏の仕組みがどうなっているかは関係ない。SOAでサービス化されているかどうかは重要ではないのだ。結果的に自分たちの要求が実現され、それが使いやすいものならばいいのである。