システムのTCOの7割が運用・維持管理コストで占められていると言われるが、システム数の増加に伴い、システムごとに異なるシステム運用方法や手順は増え続け、IT全般統制への対応による業務負荷も増加し、運用コストの削減がますます難しくなっている。システム運用の標準化や自動化による品質向上とコスト削減について、NRIの事例を交えて考察する。
運用コスト増大と品質低下の根本原因とカイゼンの難しさ
最近のIT 全般統制への対応による業務負荷増にも伴い、システムのTCO (Total Cost of Ownership)の7 割が「運用・維持管理」フェーズで占めていると言われている。その原因をひも解くと、1990 年代後半に行き着く。
当時、メインフレームによるシステム構築及び運用のコストに耐えきれなった多くの企業が、初期投資コストの低いオープン系システムの導入を開始した。これらのシステムは、企業のビジネス拡大に合わせて順次導入されたが、個別の業務や投資予算に基づいた「個別最適」のシステム導入が繰り返され続けた。
その結果、システムごとに異なるシステム運用方法や手順が存在することになり、過度の人的リソース依存のシステム運用が実施され、人件費が大部分を占める形での運用コストの増大と、運用の属人化の結果であるオペレーションミスなどによるサービスレベルの低下を招いたのである。
増大した運用コストの削減に向けて、どの企業においてもサーバー・ネットワークの監視やシステムの運用・保守業務の自動化を実現する運用基盤の導入や、最近では仮想化技術の導入によるサーバーの統合に取り組んでいる。
しかし、それらの施策はオペレータや運用担当者が実施している一部の作業の自動化や、若干のサーバー購入・保守コストを下げることしかできず、最近新たに加わった業務である「IT 全般統制への対応」による作業量の増加にもより、運用コストは減るどころか増える一方になっている。