企業が安心してChatGPTを使うためのBing Chat Enterprise
前回、生成AIの登場で個人の業務がどのように変化、進化するかを、Microsoft 365 Copilotの活用を例に日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏に解説してもらった。今後、自ら望まなくても生成AI技術が生活にもビジネスの中にも入ってくる。その際により早くから生成AIを使いこなそうとする人とそうでない人との間には、既に大きな差が出始めているとの指摘があった。より早く生成AIに取り組むべき状況の中、企業はどのように取り組めば良いかを再び西脇氏に訊いた。
OpenAIが開発、提供しているChatGPTは、アカウントを登録すればWebブラウザー経由ですぐに利用できるサービスだ。ブラウザを使ってチャット形式で質問すれば、人と会話をするように極めてなめらかな文章で回答を返す。生成AIのメリットをすぐに享受できるChatGPTだが、使い込んで行くとさまざまな課題も見えてくる。たとえば情報漏洩などのセキュリティにかかわる課題、プライバシーや著作権の課題、差別などの倫理面での課題、AIが生成した結果の悪用可能性の課題などがある。
「開発途中のプロジェクトの機密情報をChatGPTに渡し、何らかアドバイスを得ようとするかもしれません。他にもセミナーの受講リストと既存顧客のリストをChatGPTに投げ、自動でマッチングするよう指示するかもしれません」と西脇氏。このように業務で生成AIを使おうとすると、生成AIとのやり取りの中で機密情報が漏洩する懸念が出る。これでは業務で安心して使えない。
一方でChatGPTの機能をエンタープライズ向けにした「Bing Chat Enterprise」なら、「質問するデータが外部に漏れ出ることはなく、マイクロソフトも質問内容を監視していません」と言う。Bing Chat Enterpriseは、ChatGPTに企業データ保護の機能を追加し、BingのAIチャットを業務に利用できるようにしたツールだ。認証にはAzure Active Directoryを用いることができ、職場アカウントのアクセスのみを許可するよう運用できる。
Bing Chat Enterpriseを使えば、従業員がコンテンツの生成、データの分析や比較、ドキュメントの要約や新しいスキルの習得、コードの記述などを迅速に行うのをサポートする。もちろん質問データがLLMの学習に使われることもない。チャットのデータは転送中に暗号化され、履歴機能は提供されておらずチャットのデータは保持しない。チャットのデータには、マイクロソフトも一切アクセスできないのだ。
Bing Chat Enterpriseなら、企業も安心して生成AIに質問を投げかけられる。Bing Chat Enterpriseで利用できるLLMのモデルはGPT 3.5、4.0で、Microsoft Officeのライセンスがあれば無償で利用できる。このように企業が安心して生成AIを利用する際の、1つ目の安心できる入り口がBing Chat Enterpriseとなる。実際、高いレベルのセキュリティ性が求められる企業も、これには関心を示しており導入している、導入意向を示している企業が多数ある。