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ENEOSが“事業部門任せ”のDXに終止符。対等な立場での「伴走型」にシフトし成功事例を創出へ

DXを阻む企業風土を変える原動力に

 DX推進に取り組み始めても、うまくいかない企業は少なくない。ENEOSもその一つで、2020年度からデジタル人材育成に取り組んでいたが、大きな“成功事例”と呼べるものが生まれず、企業風土にも課題感を抱えていた。 2023年11月半ばに開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2023」に、ENEOSホールディングス 取締役 副社長執行役員 CDOの椎名秀樹氏が登壇。「今日のあたり前を支え、明日のあたり前をリードする『ENEOSデジタル戦略』」と題して講演し、同社のデジタル人材育成の取り組みや企業風土改革への思いを語った。

事業変革を起こすために必要な“4つの原動力”

 ENEOSは親会社のENEOSホールディングスと一体運営をしており、国内燃料油シェアは約50%を占め、石油化学製品や電力事業も展開している。昨今のロシアのウクライナ侵攻をはじめとした地政学リスクやカーボンニュートラルの実現に対する社会的要請の高まりを受け、2040年に向けて「ENEOSグループは『エネルギー・素材の安定供給』と『カーボンニュートラル社会の実現』との両立に向け挑戦します」という長期ビジョンを掲げている。

 主力である石油精製販売を基軸としつつも、再生エネルギー、水素エネルギー、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO2回収・貯留)、バイオ燃料などへのエネルギートランジションを加速させるには、経営基盤の強化が必須。椎名氏はそのためには「DXが欠かせない」と話す。

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ENEOSホールディングス 取締役 副社長執行役員 CDO 椎名秀樹氏

 ENEOSが考えるDXとは「『抜本的な業務改善や新たなビジネスモデル創出』をデジタル技術を活用して実現すること」だと定義する。つまり、DXはツールであって目的ではない。同社がDXを通じて実現したい事業変革は大きく3つある。基盤事業の徹底的な最適化に取り組む「ENEOS-DX Core」、成長事業の創出と収益拡大を目指す「ENEOS-DX Next」、そしてエネルギートランジション実現を加速させるための「カーボンニュートラルに向けたDX」だ。

 また、これらDX推進のために強化すべき原動力として「デジタル人材育成」「データ活用」「ITガバナンス」「共創機会」の4つを挙げた。このうちENEOSが最も重要と考えているのがデジタル人材育成だ。

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 実はENEOSでは、既に2020年度から予算を充て、各部門に任せる形でDXの推進に取り組んできた。しかし、2021年度末時点で成功事例と呼べるものはほぼなかったという。

 原因解明のために、全社員アンケートや投資案件に対するモニタリングを実施。その結果から、「DXに取り組む時間がない・人がいない」「DX関係の資格保持者が、DXに取り組む機会が無い」「QCDに問題を抱えた案件が多い」といった具体的な課題が見えてきた。

 そこで、DX重点テーマを選定してプロジェクト化し、限られたリソースを集中させるとともに、外部人材も招へい。さらに各部門に任せきりにせず、定期的な状況確認などコミュニケーションを強化した。それでもなお「何のためにこのDXを行うのか目的が曖昧」「IT部門は関与不足、事業部門はベンダー依存」「プロジェクトの進め方がわからない上司に盲従」といった課題があった。椎名氏は「これはDXのスキル不足だけではなく、組織風土も要因になっているだろうと思いました」と振り返る。

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目指す姿を定めてデジタル人材育成を推進

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この記事の著者

古屋 江美子(フルヤ エミコ)

フリーランスライター。大阪大学基礎工学部卒。大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、顧客管理システムの運用・開発に従事したのち、ライターへ転身。IT・旅行・グルメを中心に、さまざまな媒体や企業サイトで執筆しています。Webサイト:https://emikofuruya.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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