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企業が陥りがちなデータ活用の“落とし穴” 「仮説思考」の5ステップでビジネスとデータをつなぐ

 生成AIをはじめとしたAI技術など、膨大なデータを活用するための新しい技術は日々目覚ましい進化をみせています。一方、私たち人間はデータをうまく活用できているのでしょうか。際限なく増え続ける情報やデータとどう向き合ったら良いのか、データ活用がうまくいかないといった悩みを抱える人も増えていることでしょう。こうした現況を見て、「企業のデータ活用がうまくいかないのには理由がある」とギックス取締役/共同創業者の田中耕比古氏は言います。今回は同氏が著した『仮説とデータをつなぐ思考法 DATA INFORMED』(SBクリエイティブ)を紹介。データを使いこなし、ビジネス成果を上げるために必要なことは何か、同書の一部を紐解きます。

爆発的に増えるデータ時代、我々のすべきこととは

 機械学習やAIなどの技術が発展し、データを機械に読み込ませれば自動的に答えが導き出せるような技術が生まれるなか、人間のすべきことは何か。田中氏は著書『仮説とデータをつなぐ思考法 DATA INFORMED』で、データを活用するには「データによって判断者である人間の思考が強化される(本書42ページより)」という“データインフォームド”の考え方によってそれが見えてくると提唱しています。もちろん、機械にデータ処理と判断を任せるべきシチュエーションは多くあり、その領域は技術の発展にともなって拡大する一方、インプットデータが足りず、正解がないような「判断」をともなう作業はやはり人間の手元に残ります。このような思考による判断が必要な業務において、機械を使いこなしながら最終判断をしていくことが我々には求められると田中氏は言います。

データ活用でつまづきやすいポイント

 「データ活用」と聞いて多くの方が想像するのは「データを扱う技術」でしょう。具体的にはプログラミング言語を使う能力やExcelなどのデータ処理ツールを扱う力です。こうした技術はデータを理解できる形にして読み解くために必要である一方、これだけを備えていても「データを活用できている」状態にはなりません。では、どのような能力が必要なのか。田中氏は「目的設定能力」と「データの解釈能力」だと説明しています。

 「目的設定能力」とは、データ活用の目的を設定し、その目的のためにどのようにデータを活用するのかを考える能力。「データの解釈能力」は、データから生成されたアウトプットの内容を理解し、そこから得られる示唆を導き出す能力を意味します。つまり、プログラミングなどでデータを扱う業務の“前と後ろ”には、ビジネスにおけるデータ活用の目的を明確にし、アウトプットを解釈して次につなげる「ビジネスとデータをつなぐ役割」が重要だと言います。

 こうした役割を田中氏は自動車に例えて説明しています。データ活用において、データを作る・扱う“作業能力”は、自動車を前進させる役割を担う「駆動輪」(後輪)と同じ役割。しかし、これだけでは自動車がどの方向に進んでいけばよいのかわからないため、方向を決める「操舵輪」(前輪)が必須です。著書では、これをデータ活用におけるデータを読み解く“解釈能力”にたとえて詳しく言及されています。データ活用で成果を出すためにはこの駆動輪と操舵輪の双方が必要ですが、技術が必要な駆動輪にだけフォーカスし、操舵輪がおろそかになっている企業はデータ活用がうまくいかないと田中氏は指摘します。

DXのカギは「データの業務適用」

 このように目的が不明瞭なためにデータ活用がうまく進まないという問題は、DXを推進していく上でも起こりうると田中氏は述べています。データを用いてビジネス変革・業務改革を行うDXを進めるためには、目的を明確化し、そこに向かってハンドルを操作する必要がある。とはいえ、全員がデータ分析能力を身に着ければよいわけではなく、社内において“自分が果たすべき役割”を理解して取り組むことが大切だと主張しています。

 そのために必要なのが、事業推進において「データを理解してビジネスにつなげる」観点を持つことだと言います。DXには大きく「戦略」と「実行」の2つの柱があり、それぞれ戦略領域で立てた計画を実行領域で具現化します。この実行領域における業務には「経営活動」「事業推進活動」「デジタル/データの業務適用」「システムやデータベースの構築/データ分析」に分けられますが、DXの鍵を握るのは「デジタル/データの業務適用」の業務。データの業務適用とは、先ほど触れたように「データを理解してビジネス成果につなぐ仕事」です。昨今のDXはこの部分が手薄になってしまっていることで、うまくいかないケースが見られると言います。

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この記事の著者

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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