インフラとして浸透したSOA
SOAというキーワードを最近耳にすることが減っていることについて、澤出氏は「SOAが廃れたということではなく、BPMに支えられたビジネス戦略をインフラとして浸透しているから」と述べる。同様な意見は、同イベントの基調講演でも出された、豆蔵の安井昌男氏の「SOAはコモディティ化している面もある」との認識とも一致するものだ。
SOAの最大の目的であるビジネスの迅速性というニーズは確かに存在している。変化が激しく流動性も高い現代において、プロセスの変化や法改正などに柔軟に対応する必要があるのは自明である。ビジネスプロセスにおいて、このような迅速性を求めるなら、アーキテクチャのコアになるのは「疎結合性」だ。澤出氏はこう述べた上で、SOAはコア部分でBPMを影から支える存在になっていると強調した。
そうはいってもオフィスワークの現実はBPMの浸透は不十分であるといわざるをえない。プロセスモデリングの実施状況、BPMライフサイクルによる反復的な改善、XMLやBPELの普及度など、メソドロジーとしてもテクノロジーとしてもBPMが十分に機能していない。
翻って製造業の現場では、プロセスやフローは可視化され反復的な改善も実施されている。いわゆる「カイゼン」というものだ。カイゼンとBPMは、アプローチと分類モデルは異なるが、目指すところと実施方法(ライフサイクルの反復)など類似点も多い。
澤出氏によれば、同じ目標に対して、似たようなモデリングとスキームを適用しているのに、オフィスワークでうまくいかない理由は、BPMが間違っているのではなく、そのライフサイクルに乗るまでに問題があるのではないかという自説を披露した。
BPMライフサイクルが回り始める前での問題とは、ビジネス側のプロセスやAs-IsモデルをIT部門側のソリューションでいかに実現(実装)するかにかかっている。つまり、ビジネスの現場の担当者やアナリストが、現実の業務をIT用語ではなく自分の言葉でプロセスを記述することが重要で、それを実装に落とし込むための手段や方法に問題があるということだ。
一般的にビジネスプロセスの詳細を把握しているのは現場の担当者だ。担当者の頭の中には業務は明確にイメージされていても、その手順やフローを可視化したり体系化することは別問題だ。適切なツールを使わないと、プロセスそのものがツールの制約によって捻じ曲げられてしまう。また、プロセスの記述がうまくいっても、BPELの機能によって実装を制限されたり、ビジネスアセットのメタデータ化が適切でなくても、やはりうまくいかない。