さらなる成長が見込まれる「リーガルテック」市場
法律にかかわる、さまざまな業務をデジタル技術で支援する「リーガルテック」市場が活況を呈している。コロナ禍を機に多くの企業が、これまで紙で行われてきた法律・契約関連業務のデジタル化を進めており、電子契約サービスをはじめ、さまざまなIT製品・サービスの導入が加速した。
なかでも注目を集めているのが、契約書の作成やレビューなどの作業をAIを用いて自動化・省力化するサービスだ。この分野において現在トップクラスのシェアを誇るのが、LegalOn Technologiesが開発・提供するAIレビューサービス「LegalForce」。契約書のドキュメントファイルをアップロードすれば、AIがその内容を精査してリスクのある箇所を抽出するとともに、関連情報を提示してくれるというもので、契約書審査業務の効率アップと品質向上を実現するサービスとしてさまざまな業界で導入が進んでいる。
また、同社のもう1つの主力製品であるAI契約管理システム 「LegalForceキャビネ」は、締結後の契約書をシステムで一元管理するサービス。契約の更新時期が近づいてきたら担当者にメールで通知するなど、さまざまな機能を通じて契約管理業務の自動化・省力化を実現可能だ。
既にリーガルテック市場において高いシェアを持つ同社だが、代表取締役 執行役員・CEOの角田望氏は「今後もリーガルテック市場全体は成長を続けるだろう」と予測する。
「現在グローバルで約5,500社のお客様にサービスをお使いいただいていますが、日本国内だけでも約170万の株式会社がある中、既にリーガルテックを導入している企業は全体の1%にも満たないと思います。つまり、市場全体にはまだ大きな伸びしろがありますし、海外市場も含めると今後さらなる成長が見込めます」(角田氏)
シェア拡大目指し、単一プラットフォームでの市場展開へ
なお同社は2024年4月、新たなサービスとしてAI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」をリリースした。これはクラウド上に構築した単一プラットフォーム上に、法務・契約業務を支援するさまざまなサービスを載せ、互いにシームレスに連携させた形で提供するというもの。
これまでは法務・契約関連の各業務に対応するサービスを個別に提供してきた同社だが、今後はこのLegalOn Cloudのプラットフォーム上にあらゆるサービスを実装していき、最終的には「法務・契約業務全般をカバーするAI法務プラットフォーム」の実現を目指すとしている。
「業務部門から法務部門に法務案件の相談が寄せられた際、LegalOn Cloud上でAIに問いかければ過去の類似案件や関連する法令が自動的に提示され、法律論点を抽出してくれます。また、契約締結後は契約書のデータがLegalOn Cloudで自動的にデータベース化され、更新時期が近づくと通知してくれます。このように、LegalOn Cloudのプラットフォーム上ですべての法務・契約業務を完結できることを目指しています」(角田氏)
本稿執筆時点(2024年7月)では、AIを使って契約書レビューを自動化する「レビューサービス」、法務の案件管理を支援する「ワークマネジメントサービス」、契約締結後の契約書管理を行う「コントラクトマネジメントサービス」の3つのサービスをLegalOn Cloudで利用可能だ。今後は、さらに広い範囲の法務・契約業務に対応したサービスを順次実装していく予定だという。
なお、これらのサービスは、先述したLegalForceやLegalForceキャビネといった既存サービスを単に移植したわけではなく、サービス間でのシームレスなデータ連携やアカウント管理、アクセス制御などを実現するために、新たに設計・開発されている。
「お客様が本来求めているのは単体のサービスではなく、LegalOn Cloudのようにすべての業務を網羅したプラットフォームサービスです。弊社はこれまで開発リソースが不足していたため、やむなく単体サービスの提供にとどまっていました。しかし、ここへ来てようやく十分な企業規模に達したため、満を持してプラットフォームサービスの提供へと踏み切りました。2、3年後には、あらゆる法務・契約業務をLegalOn Cloudでカバーできるようになる見込みです」(角田氏)