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S/4HANA移行で頓挫したイトーキ、「高度ERP化」を掲げてOracleで刷新中 その狙いと工夫は

壁を乗り越え「データドリブン経営」へ

 イトーキグループは、2024年から26年にわたる中期経営計画を発表している。計画の主な取り組みとして、グループ生産供給体制の再編、社内ITインフラの刷新、AIの活用、デジタル化への投資などが挙げられた。ITやデジタル技術への投資で、大きく変革しようとしている姿が見て取れる中、「ITインフラの高度ERP化」とは一体どのようなものなのか。イトーキ 執行役員 DX推進本部 DX統括部長の竹内尚志氏に話を聞いた。

複雑な業務プロセスを持つイトーキの基幹系システム刷新の困難

 イトーキグループが掲げる中期経営計画『RISE TO GROWTH 2026』、ここにITへの投資が強く打ち出されている背景には、ITシステムやアプリケーションの老朽化といった課題がある。 日本の製造業では、20年以上使い続けている基幹系システムも珍しくなく、イトーキも同様に、20年ほど前にスクラッチ開発した基幹系システムを使い続けていた。

 当然ながら、長く使い続けるためには毎年のように修正を加える必要があり、なんとか業務も回っていた状況だ。しかし、新しいことをやるためにアプリケーションを改修したくても、既存のITシステムのことがわかる人は減っていき、ドキュメントなども不足していてうまくいかない。いわゆる「2025年の崖」へまっしぐらの状態だった、と竹内氏は語る。このような状況で「データドリブン経営」などを掲げても、前には進められない。

 また、事業部単位に最適化した形で、ITシステムが導入されてきた経緯もあり、部門ごとにITシステムが分散し、データも各データベースごとに格納されている。経営に関わる数字を見ようとしても、それらから必要なものだけを夜間バッチで集める必要があった。

データドリブンを目指す上での課題感
データドリブンを目指す上での課題感(提供:株式会社イトーキ)
[画像クリックで拡大]

 現在、イトーキグループ全体が従来のオフィス家具や空間にIT・デジタル技術をかけ合わせることで、新たな価値を生み出そうと大きく舵を切っている。そのために工場再編などにともなう製造関連システムの刷新など、さまざまな形でデジタル化に取り組んでいる真っ最中だ。そうした潮流の中、データドリブン経営、AIの活用などを見据えてイトーキ本社では基幹系システムの刷新に取り組んでいる。

 既に同社では並行してインフラ運用の効率化などを目的に、オンプレミスで運用してきた各種システムをクラウドへ移行していた。このときクラウドプラットフォームには、Amazon Web Services(AWS)を選定していたこともあり、基幹系システムとして採用を決めたSAP S/4HANAをAWS上で構築することとなる。

 そこから3年ほどの時間をかけ、SAP S/4HANAへの基幹系システムの移行作業が行われた。しかし、「当社の業務は多岐にわたり、何かを仕入れて販売するだけでなく、自社生産する製品も種類が豊富な分だけ代理店も多く、顧客先もBtoB企業だけでなくBtoCも対象です。業務は極めて複雑で業界特有のプロセスもあるなど、それらすべてをパッケージにあわせることには無理がありました」と竹内氏は語る。

株式会社イトーキ 執行役員 DX推進本部 DX統括部長 竹内尚志氏
株式会社イトーキ 執行役員 DX推進本部 DX統括部長 竹内尚志氏

 Fit to Standardでの移行を目指す中、独自の業務プロセスとして譲れないところもあり、対応するためのアドオン開発がどんどん増えていた。それらを最終段階で結合しても、なかなかうまく全体のシステムが回らない。結果的に、プロジェクトが先に進まない状況となり、2021年にはSAP S/4HANAへの移行を断念せざる得なくなる

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新体制でOracle Fusion Cloudを採用、「データドリブン経営」の実現へ

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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