Workdayは10年前からAI開発に取り組んできた
今でこそ、世間はAIの進化に大きな期待と関心を寄せており、ベンダーは続々と生成AIの新機能実装や製品開発に取り組んでいるが、Workdayはここ数年の生成AIブームが起こる以前から、AIの開発には多額の投資を行ってきた。
「Workdayは、約10年前から本格的なAI開発に取り組んできており、数々のモデルを構築してきた」と、同社でAI責任者を務めるファム氏は語る。また、AI開発を加速すべく、技術を有するスタートアップの買収も積極的に行ってきた。そして2020年からは、LLM(大規模言語モデル)の研究と開発にも注力しているという。
Workdayの新技術は、ユーザー企業や社内のWorkdayユーザーチームであるWoW(Workday on Workday)から寄せられる要望・フィードバックを取り入れながら開発されている。たとえば、「思い描いた通りのレポートをなかなか生成できない」や、「現行の機能では、(人事の)採用担当者の目にかなう候補者を見つけるのが難しい。候補者をわかりやすく可視化したい」などといった要望だ。
また、ユーザーエクスペリエンスチームは、ユーザーがWorkdayの製品をどう利用しているのか現場で観察し、「何が機能し、何が混乱を引き起こしているか」を記録して製品チームに共有している。
ChatGPTがコンピューターとの対話を変えたように、「人事・財務システムとの対話」を変える
今回のRisingでは「Workday Assistant」をはじめ、Workday製品で初となる生成AI機能が発表された。
生成AIの技術をWorkdayに実装する以前、同社が感じていた最大の課題は、「現場のユーザーが抱える、財務や人材に関する重要な問題をどう解決するか」だったとファム氏。これまで、ユーザーからは「Workday内での検索機能が使いづらい」「従業員の給与明細を比較する際、いくつものボタンをクリックする必要があり手間がかかる」などといったフィードバックも寄せられていたという。財務や人事のような、専門的な領域の課題を解決する機能を提供するためには、ただ生成AIの技術を実装するだけでは不十分だ。
この問題を解決したのが、Workday Assistantである。自然言語で、「給与明細を見たい」「他の給与明細と比較したい」「ボーナスの構造を知りたい」などと指示するだけで、目的の情報を即座に得られるようになった。
「Workdayは創業時(2005年3月)から強固なデータ基盤を構築し、その後、内部での開発や買収を通じて、AIを構築するための力を培ってきました。ここ数年は特に、お客様の要望をもとに、皆さんが現場で抱える問題の解決に真剣に取り組んできました。今では、ChatGPTが人とコンピューターの対話方法を大きく変えたように、Workday Assistantによって人事・財務システムとの対話が変わるのではと、大きな期待が持てるようになりました」(ファム氏)