日本アイ・ビー・エムが開催するSOAカンファレンス「IMPACT AUTUMN 2009 JAPAN」が去る11月26日、東京・グランドプリンスホテル赤坂で開催された。
基調講演として、日本アイ・ビー・エム株式会社専務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦 浩氏、同社専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略・市場開発担当のピーター・カービー氏が登壇。「Smart Work:スマートな働き方を実現する業務プロセス改善へのアプローチ」と題した講演をおこなった。
このカンファレンスは、SOAを中心に、昨年から春と秋に2回開催され、今回ですでに4回目を迎える。まず、三浦氏は今回のテーマである「スマートな働き方」の問題として、個人の生産性が様々なITツールによって増大したのに、組織の生産性が停滞していることを指摘。
ビジネスとITが乖離している企業は、俊敏性をもった企業に比べて、12%も売り上げが減少しているとし、人々の専門性をつなぎ、協働のプロセスと基盤をつくることを提唱。その具体的なサンプルとして、自動車産業の相互依存的なコラボレーションや、グローバルなリソースの最適配置を解説した。
また、電力業界でも、近年のオバマ政権のグリーン・ニューディール政策で本格化している「スマート・グリッド」の例をあげ、ITによる電力供給の最適化の例を紹介。日本でも次第に、理解が浸透してきたスマート・グリッドだが、利用者による安価な電力の購入と自家発電、電力会社による送電線の自動監視や供給管理が実現することで、社会そのものがインテリジェントになるというビジョンを語った。
「電力インフラ、バッテリー、通信コミュニケーションなどの技術と、政府、自動車業界、家電産業のITによるコラボレーションが実現することで、新たなイノベーションが生まれる、さらには他業界へのコラボレーションも進展していくだろう」(三浦 浩氏)
この産業セクタによるコラボレーションという概念は、従来であれば個々の企業間取引というものでしかなかったが、IBMが掲げるスマートワークによるコラボレーションは、個人のライフログのような履歴(IBMはサイバーセルフと解説)、エネルギー、情報コンテンツがダイナミックに協調する社会イメージである。
もうひとつの重要な条件であるグローバルなリソース配置については、開発・製造・スキルのリソースを地域拠点の特性やリソースマーケットとしての新興国に着目し、重要な能力の最適化を図る戦略を、ピーター・カービー氏が提唱。
厳しい経済環境を迎えた現在から、2010年代に向けた、企業の成長イメージを「俊敏性・協調性・持続性」というキーワードに集約した。
本セッションは技術論というよりは、むしろ経営層にとっての今後の社会と経営のつながりを示唆するものであり、本カンファレンスのテーマである、BPM、SOA、コラボレーションの3つの要素からなる「Smart Work」というビジョンを提示することで、地球的、国際的、社会的視点からの企業活動が、新しい時代の価値を創出することを示したといえる。