APIマネジメントを通じて、日本企業を強くしたい
APIマネジメントプラットフォーム「Kong」を提供する米Kongは、2023年11月に日本法人を設立。同社 代表取締役社長に就任した有泉氏は、「これまでの約25年間、ずっと営業畑でやってきた人間です」と自らを評す。大塚商会を経て、デル・テクノロジーズ、コンカーなどでエンタープライズセールスに従事。コンカーでは日本法人の立ち上げ当初から、10倍以上の360名にまで拡大してきた時期に営業本部長として手腕を発揮してきた人物だ。
Kongは、ユーザーコミュニティを中心として徐々に浸透してきた経緯もあり、日本企業における知名度はこれからといえる。APIマネジメントに対する解像度も同様だろう。一方、欧米でのデファクトスタンダードが日本で定着するという定説がある中では、政府機関やFortune 500企業への導入が進んでいるという実績を築きあげており、2024年10月22日には、Gartner Magic QuadrantのAPIマネジメント部門において、5年連続でリーダーにも選出されている[1]。「APIマネジメントは、日本でも欠かせないものになっていくはずだ」と有泉氏。プレシデンス・リサーチによると、「APIマネジメントの市場規模は、2022年の67.7億ドルから2032年には940億ドルと約14倍に成長する」と予測[2]されており、これをさらに上回る可能性があると話す。
2000年代に突入してからRESTful APIが普及して以来、APIの利用数は増加。クラウドネイティブな開発環境の整備が進み、昨今の生成AIブームも後押しして「APIをどのように管理するか」が大きな課題となっているからだ。こうした背景にともない、APIマネジメント市場が伸長しており、有泉氏も市場成長のポイントを3つ挙げる。
1つ目は、従来のモノリシックな仕組みの開発手法ではなく、マイクロサービスを活用したアプリケーション開発が増加している点。インターフェースとしてAPIを利用するため、APIマネジメントの需要を直接押し上げている要因になる。
2つ目は、欧米で先行している「APIのプロダクト化・収益化」だ。たとえば、配車サービス大手のUber Technologiesは「Uber API」を公開することで、アプリケーションに“配車ボタン”を設けられるようにしたことでAPIエコノミーを確立。こうした事例は急速に増えており、APIマネジメントの需要は高まっていく。
3つ目は、AI活用の増加である。特に生成AIが普及してからは、データのやり取り、システムの連携にAPIは欠かせない。まさに爆発的なAPI増加の大きな要因であり、これにともないセキュリティや認証の強化といった多くの課題も生まれている。これをサポートするための技術要素としてAPIマネジメントは必要になるため、市場牽引に大きく寄与する要因だという。
ただし、APIマネジメントのニーズは、すべての業界で一律に高いわけではない。グローバル市場において、Kongの採用比率の高い業種は金融、製造、IT、流通・小売りとなっている。そのため、日本でも金融を皮切りに提案を拡充していく方針だ。なお、日本企業の中には、現時点でのAPIは少ないものの拡張性を考慮し、当初からAPIマネジメントプラットフォームを整備しておくべきという考えから導入に至った例もあるという。「まさにAPIマネジメント導入の機運が日本でも高まっている裏付けだ」と有泉氏。
そこで、KongのGTM戦略の柱は大きく2つ。まずは、APIマネジメントという市場を確立させるために、言葉自体を定着させること。そして、APIマネジメントがなぜ必要かを意思決定層に認識してもらうことだ。先述した通り、「Kong Gateway」というOSSのAPIゲートウェイとして提供された経緯から、開発者に対してAPIマネジメントの重要性、同社の優位性を訴えてきた。一方、エンタープライズを中心として、有償サポートを求める企業でのユーザー数を増やすためには、マネジメント層にも必要性を理解してもらわなければならない。
欧米で導入が相次いでいるのは、APIエコノミーによって事業優位性を築き、新たなデジタルサービスを創出してきたことがマネジメント層の理解につながっているからだ。裏を返せば、日本でのAPIマネジメントの認知が低い一因として、「デジタルサービスの新規創出が十分でなく、結果的に『APIを管理する』という考えに至っていないのではないか」と有泉氏は指摘した。
[1] 「Kong、2024年Gartner Magic Quadrant『APIマネジメント』部門において5年連続リーダーに選出」(Kong, 2024年10月24日)
[2] Stephanie Houde and Charles Hill「API Management Market Size, Share, and Trends 2024 to 2034」(Precedence Research, Last Updated : July 2023)