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週刊DBオンライン 谷川耕一

Inforが突き詰める「業界特化型」ERP、生成AIでも変わらない“ニッチな”アプローチの価値とは

「Infor Velocity Summit in Amsterdam」現地レポート

 業界特化型のクラウドERPを提供するInforは、オランダ・アムステルダムでユーザー事例や最新のソリューションを紹介するカンファレンス「Infor Velocity Summit」を開催した。基調講演では、CEOのケビン・サミュエルソン(Kevin Samuelson)氏とCTOのソマ・ソマスンダラム(Soma Somasundaram)氏が同社の強みである、業界特化型ERPについて解説。生成AIをERPでどのように活用するかも紹介した。

企業により価値を得るためのアプローチはさまざま

 Inforは、世界170ヵ国以上で60,000社を超える顧客にビジネスアプリケーションを提供するベンダーだ。特徴は、“業界特化型”のクラウドERPを提供していること。プロセス製造や流通、食品、飲料、ヘルスケアなど、それぞれの業界に特化したソリューションを提供することで顧客から評価されている。

 そんな同社は「インダストリークラウド・コンプリートカンパニー」(Infor is the Industry Cloud Complete Company)を謳い、クラウドファースト戦略を掲げており、各業界に精通した深い知識、それを基に開発された業界特化型のソリューションに強みをもつ。業界特有のニーズに対応した機能を備えているため、顧客は導入してすぐに業務効率化、生産性向上に取り組める点が特徴だ。

 そうした業界特化型のソリューションを提供するため、Inforが続けているのは顧客の声を積極的に製品へと反映すること。汎用的なERPをカスタマイズすることで、顧客のニーズを満たすのではなく、業界や業種に特化したベストプラクティスを製品に組み込んでいくアプローチだ。顧客にとっては、Inforを導入してしまえば、ほとんどカスタマイズすることなく、自社のビジネスプロセスに沿ったERPを実現できる。

 Inforによれば、業界を問わず7割以上の企業が生産性向上など、ビジネス価値を得るために投資を続けている一方、30%程度しか成果をあげられていないとの調査結果があるという。このギャップを同社は「Value Void(価値の空白)」と捉える。

 たとえば、価値の空白が生じているものとして「利益」があるだろう。「株主が望んでいることであり、多くの経営者は利益で評価されます。また、収益の伸びは、最終的に利益につながるため重要です」とサミュエルソン氏。最近では、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関連する指標も重視されている。そのため、ESG領域においても企業価値を示さなければならない。

Infor CEO ケビン・サミュエルソン(Kevin Samuelson)氏
Infor CEO ケビン・サミュエルソン(Kevin Samuelson)氏

 “求められる価値”と“実現される価値”の間に空白が生まれたとき、ソフトウェアベンダーとしては顧客企業が目標を達成するための価値を創出できるように支援する必要があるという。そこでInforでは、下記3つの取り組みを推進することで価値創出をサポートしている。

  1. より効率的なプロセスの提供:より少ない人数で、より良い結果を出せるようなプロセスを提供すること
  2. 組織やチームに洞察力を与える:迅速で正しい判断を下せるようにすること
  3. 自動化:繰り返しや単純な作業をなくし、より価値の高い作業に集中できるようにすること

 たとえばアパレル業界では、ECで購入された商品の4分の1ほどが返品される現状がある。この状況の中で価値を生み出すためには、顧客の需要を理解し、迅速なデザインでジャストインタイムの製造を行うことが必要だ。

 また、自動車メーカーでは、さまざまなオプションを販売することにより、何千通りもの組み合わせで製造・供給を行うようになった。このとき組立ラインや在庫管理、サプライチェーンをいかに最適化できるかが価値創出につながる。

 さらに乳製品の製造においては、生産時期や生産者により、原料の牛乳に含まれる脂肪量や水分量などが異なってくるため、一定品質で生産し続けるには原料成分の詳細な管理が必要だ。そこで必要不可欠となるのは原料や製品のトレーサビリティであり、これが価値を生み出している。

 これら3つのユースケースを含めて、「企業にとって、バリュードライバーはさまざまです」とサミュエルソン氏は説明した。

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幅広い企業ニーズに応えるのではなく、特定業界の課題解決に挑む

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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