生成AI機能も「業界特化」にすることで価値につなげる
Inforでは、すべての製品に適用できる「3つの戦略」を新たに掲げている。
1つ目の「プロセス・インテリジェンス」「プロセス・プランニング」は、常にプロセスを観察することで効率化の機会を見つけるためのプロセスマイニング機能だ。2つ目は「自動化」で、プロセスを実際に自動化することで、人が反復作業をする必要をなくす。そして3つ目が「AI」、従来の機械学習と生成AIの両方をERPの中で活用していく。
これらを実現するための環境は、既にInfor OSとしてクラウド上にプラットフォーム化されている。たとえばプロセスマイニングの実現には、プロセスの状況を把握するためのデータが必要だ。外部との連携部分ではAPIも欠かせない。自動化も同様だ。ソマスンダラム氏によれば、これらはInfor OSに少々手を加えるだけで実現可能だという。
Inforでは、Infor CloudSuiteを構築する際のクラウドプラットフォームをAWSに定めている。AWSのさまざまなサービスを利用することで、セキュリティやデータ活用基盤、APIなどをInfor OSとして実現し、その上に業界特化型のERPを実装したような形だ。そのため、AWSの便利なサービスと容易に連携できる点も特徴だろう。
たとえば、Infor ERPで機械学習を実現するために「AWS SageMaker」を利用できる。また、生成AIの機能を実装したければ、「Amazon Bedrock」を利用可能だ。生成AIに対して、多くの企業が投資しているが、その成果をビジネスに反映できているケースはまだ少ない。「機械学習と同様、生成AIで成果を得るために多くの企業が苦労しています」とソマスンダラム氏は指摘する。
では、Inforではどのように生成AIを価値につなげていくのか。その方法は、ERPと同様だ。業界特化型の生成AI機能を実装するため、Infor ERPのデータを用いて、Amazon Bedrockで実現していく。
2024年10月に提供開始された「Infor GenAI Agent」は、自然言語によるチャット形式で、単にERPのデータについて問い合わせができるにとどまらない。たとえば、ダッシュボードに表示されている内容から、問題だと思われる事項を調べたいときには、チャットで質問を投げかけると、その原因を究明してくれる。このとき、問題を解決するためのアドバイスもくれるという。
こうした一連のやり取りを、アプリケーションを切り替えることなく、1つの画面から自然言語の対話で実現できる。もちろん、Infor GenAI Agentは、どんな質問にも答えられる汎用的な生成AIエージェントではない。Infor ERPで取り扱う、ビジネスプロセスに特化した質問に答えるためのものだ。業界に特化することで精度の高い回答が可能となり、アドバイスまで提供できる。
いち早く汎用的な生成AIの機能を全社導入し、なんらかのビジネス価値を得ようとしても、うまくいかない企業が多いことが現実だ。業界に特化したベストプラクティスをもつInforが業界知識・ノウハウをうまく取り込んだ生成AI機能を実装するとで、ERPはより使いやすいものになり、効率化できるプロセスの発見、自動化なども容易になるだろう。特定の業界を深く理解するというアプローチは、生成AIの活用においても有効そうだ。