賢いAIエージェントは「複雑なタスク」も自律実行
CIMの実現に不可欠なのが「AI」だ。Boxは、2023年5月に「Box AI」を発表している。
Box AIは「Microsoft Azure」や「AWS(Amazon Web Services)」などが提供する、主要なLLM(大規模言語モデル)を統合したサービス。「Box AI for Documents」「Box AI for Notes」「Box AI for Hubs」といった機能を組み合わせ、Box内に格納しているコンテンツの内容を要約したり、指定された条件で文書を作成したりできる。「Box AIに質問すれば、ビジネスインサイトを即座に導き出せる」ことが特徴だ。
ただし、レヴィ氏は「Box AIの機能は、コンテンツの価値を引き出すものだが、生成AIの進化によってコンテンツの扱い方は根本的に変化している。その進化の価値をいち早く顧客に提供し、企業全体のワークフローを支援することがBoxの使命だ」と強調する。
その上で同氏は、生成AIがコンテンツ管理にもたらすインパクトを3段階に分けて説明。まず、従来型の生成AIはユーザーが簡単な質問(プロンプト)を入力し、それに対する返答を繰り返すことでインサイトを引き出す、いわば「壁打ちのアシスタント」的な役割を担っていた。続いて、複数の生成AIを活用できる段階では、“質問の最適化”を自動実行したり詳細な情報収集を支援したりする「AIエージェント」に昇華した。
そして3段階目の「次世代AI」は、複雑なタスクを自律的に実行する。具体的には、AIがコンテンツのコンテキストを理解することでユーザーが共有する情報を把握し、文書作成から承認実行、進捗管理、文書の保管といった一連のワークフローを自動作成できる世界だ。
それを具現化するためのツールが、今回発表された「Box AI Studio」である。説明のため登壇したBox バイスプレジデント AI製品統括のヤショーダ・バヴナニ(Yashoda Bhavnani)氏は、「Box AI Studioの最大の特徴は、企業独自にカスタマイズされたBox AIエージェントを作成できることだ」と訴求する。
2025年1月に提供開始されるBox AI Studioは、顧客企業が任意のLLMから最適なものを選択し、カスタムプロンプトの設定や業務フローにあわせたパラメータ調整ができるものだ。各部門がコンテンツのアクセス権やプロンプトの条件を設定するだけで、各ユーザーに最適化されたBox AIエージェントを作成できる。たとえば、報告書の作成には「Open AI GPT-3.5」を利用し、情報分析には「Gemini」を利用するといったことが可能だ。
さらに実際のコンテンツを使用し、検証環境でBox AIエージェントの動作確認とチューニングもできる。バヴナニ氏は「検証段階で期待通りの結果が得られれば、特定のユーザーグループや組織全体への段階的な展開が可能となり、セキュリティを維持しながら効率的なAI活用を実現できる。セキュリティの観点からもBox AIエージェントは初期設定では無効化されており、展開する際には管理者の設定と検証が必要となるため、ガバナンスの観点からも安心して利用できる」と説明した。