損傷評価から請求書処理まで、複数のAIエージェントが実行
Boxで最高技術責任者(CTO)を務めるベン・クス(Ben Kus)氏は「Box AIエージェントは、あらゆる業界で複雑な業務プロセスを効率化する」と訴える。その代表的な事例の1つが、自動車保険の損傷評価と見積もりのプロセスだ。
従来、事故車両の損傷評価には、専門家の目視確認と手作業での見積もり作成が必要だった。しかし、Box AIエージェントを活用すれば、写真から損傷状況を把握・分析し、必要な修理箇所を特定できるという。さらに、複数のBox AIエージェントを活用することで、修理単価の参照、見積もりの作成と確認が同時に実行できる。クス氏は「これまで数日単位を要していた見積書の作業が数分で完了する」とその効果を強調する。
また、非構造化データを構造化する新機能として「Box AI for Metadata」も紹介された。これは文書や画像などのコンテンツから、AIが自動的にメタデータを抽出して付与するものだ。従来はアップロード時に手作業でフォームに入力する必要があったが、同機能を利用することで自動的に文書を分析し、重要な情報を抽出できるという。
非構造化データが構造化データになれば、Box AIエージェントの活用の幅はさらに広がるとバヴナニ氏やクス氏は口を揃える。その具体的な活用例としてバヴナニ氏は、NDA(秘密保持契約)を挙げた。PDFで保存された契約書から満期日を自動抽出し、プロジェクトマネージャーが日付でソートやフィルタリングを実行すれば、契約更新の適切なタイミング管理が可能になるという。
「これまで手作業だった請求書の処理は、金額に基づく自動ルーティングが可能だ。たとえば、150万ドルを超える請求書は自動的に最高財務責任者へ、それ未満のものはマネージャーに振り分けるといった運用が可能になる」(バヴナニ氏)。なお、現時点ではBox AI for Metadataの対象はテキストベースの文書だが、近い将来には画像や表計算ソフト、さらに音声や動画からもメタデータ抽出が可能になるとのことだ。
もう1つ、今回のイベントで“目玉”となったのは、ノーコードアプリケーション開発プラットフォームの「Box Apps」である。これはBoxに格納されたコンテンツを基軸に、ビジネスプロセスの自動化を支援するアプリケーションをノーコードで開発できるものだ。具体的には、多機能ダッシュボード(可視化アプリ)やカスタマイズされたコンテンツビュー、ワークフロー自動化機能を備えたアプリを用途に応じて作成できるという。
Box Appsの特徴は、コンテンツ管理をはじめ、ワークフロー機能やユーザー管理といった複数のコンポーネントを統合的に活用できることだ。たとえば人事部門での休暇申請システム、営業部門での案件管理、建設現場での写真管理とワークフローなど、様々な業務用アプリケーションを構築できる。
また、「BoxForms」「Box DocGen」「Box Relay」といった別のBox機能とも連携でき、業務プロセスへのAIエージェントの組み込み、特定業務向けの“特殊なAIエージェント”を展開することも可能だ。Box バイスプレジデントで製品管理戦略担当のランド・ワッカー(Rand Wacker)氏は「Box Appsは業界特有の要件に応じたAIモデルの調整や、複数のAIモデルの組み合わせによる最適化が可能だ。これらすべての操作をノーコードで実行できることは、競争力強化の観点からも大きなメリットがある」と訴求した。