製造業でのデータ活用の現状、日本独自の課題にどう対応すべき?
──では、製造業でデータを整備し、AIを活用できている企業はどのくらいいるのでしょうか。
バラムクンダン:オートデスクが実施した調査によると、我々が関与している企業の70%が、データをより活用してAI時代に備えたいと回答しています。別の調査では、企業が生成するデータの65%はまったく使用されていないと指摘するものもあります。企業はデータを所有しているにもかかわらず、そのデータからビジネスの変革に役立つ洞察を引き出したり、自動化につなげたりできていません。こうしたギャップを認識している企業が増えてきている印象です。
──日本に目を向けたとき、独自の課題や特徴などはありますか。
バラムクンダン:もはや世界共通の課題となってきていますが、日本で顕著なのは労働力人口の高齢化です。熟練者の知恵を、いかに若い世代へと継承するかが課題です。ここは、私たちがソリューションを開発していくうえでも念頭に置いている事柄ですね。
たとえば、製品開発のライフサイクル全体に適用できるプラットフォーム「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)では、製品ライフサイクル全体にわたりデータを活用して、サードパーティーや顧客と連携・共同できるようにしています。
フー:エンドツーエンドのプラットフォームであることは、独自性として強調できるでしょう。個社ごとの状況に関わらず、当社のプラットフォームを利用でき、どのような要望にも応えられるように設計しています。
特に製造業では限られたリソースで、いかに迅速に製品を開発し、納品できるか。これが究極的なゴールと言えるでしょう。そのため、アイデアを思いついた瞬間からコンピュータ上での設計、物理的な製造に至るまで、すべてのプロセスに継ぎ目なく、ソリューションとテクノロジーを提供する必要があるのです。
若年層への技術継承の課題、解決のカギはUI/UX体験
──熟練層から若年層への技術継承の点については、どのようなアプローチをとっているのでしょうか。
バラムクンダン:モダンなUI/UXを意識した実装が挙げられます。若い世代は、スマートフォンを日常的に使用しており、わかりやすいUIに慣れています。UIがわかりやすければ、特殊な訓練をせずともソリューションの使い方を自主的に学んでいくことができるのです。
また、UIの工夫とあわせて、YouTubeなどでチュートリアル動画を公開することでわかりやすく、簡単にソリューションを扱える環境を整備することを心がけています。
──ここまでの話を踏まえた上で、今後の展望をどう描いていますか。
フー:日本の大手機械メーカーの方々と、今まで以上の連携をとっていきたいと考えています。機械メーカーのなかには、ソフトウェアと機械を取り持つ技術のインテグレーションや、コラボレーションの機会を求めている方々も多いでしょう。彼らとより緊密なコラボレーションを実現することで、顧客への価値提案を強化できると考えています。
特に大手企業の幹部は、すぐに投資費用を回収したいと考えます。ですので、デザイナーやエンジニアが何かを設計しているのを見ると、すぐに実際の“物理的な製品”を製造する姿を見たくなることでしょう。
こうしたプロセスを、さらにシームレスにするにはどうしたらいいか。そのためには、デジタル形式のファイルから、物理的な製造段階へと早く進められることが大切です。ハードウェアとソフトウェアの緊密な連携により、デザインの結果を物理的な形ですぐに実現することができる。それによって、大きな価値を生み出すことができると私は考えています。