ネットワーク障害をきっかけに高速ネットワークへの刷新を決断
酒井真弓(以下、酒井):尾形さんは現在、どのような業務を担当されているのでしょうか?
尾形桂子(以下、尾形):私は、2020年1月にITベンダーから日清食品ホールディングスに転職し、当初はネットワーク担当として各案件を進めてきました。入社6年目となった今は、ネットワークを主軸としながら、PC、ネットワーク、Microsoft 365などのコミュニケーションツール、サーバーといったインフラ全般のチームリーダーをしています。管理職を含めて12人のチームで、日清食品を中心としたグループ会社のインフラを主管しています。
酒井:尾形さんのチームが特に注力している「先進ネットワーク」について、これまでの取り組みを教えてください。
尾形:大きな転機となったのが2021年4月です。その頃は5、6人で利用者が3,000~4,000人規模のインフラを運用していて、毎日の運用で手一杯な状態でした。インフラって、「導入したら導入しっぱなし」「動けばいい」とされがちなところがありますよね。
当時はコロナ禍で会社全体の働き方が大きく変化していましたが、たまにネットワークが遅くて繋がりにくいときがある程度の認識で、業務に深刻な影響が出るほどの問題とは考えていませんでした。つまり、そこまで優先順位は高くなかった。私たちもできる範囲で改善は進めていましたが、きちんと投資して抜本的な解決をしようとまでは至っていませんでした。
そんな中、重要な社内イベントの最中にオンライン配信が途切れたり、各拠点からも視聴できなくなったりする事態が発生しました。これをきっかけに、私たちはもちろん、経営層もネットワークの問題を把握し、急ピッチで進めることになりました。
酒井:具体的にはどのように改善を進められたのでしょうか?
尾形:まずは、ボトルネックの特定を急ぎました。当時はまだ通信の可視化ができておらず、「ここが怪しそう」くらいしか絞り込めなかったのですが……。全社的に影響は出ていたので、それをヒントに全社の通信が通るファイアウォールを被疑箇所とし、最初に対処。トラブルから約1ヵ月後のことでしたが、ひとまずはかなり悪い状況から脱することができました。
その後も、このままだと再発の可能性が否めず、3つの柱で改善を進めました。1つ目が通信の可視化によるボトルネックの特定。2つ目と3つ目は、ネットワークを「道」と考えたときの2つの選択肢、つまり「道を広げる」「道を増やす」というアプローチです。
酒井:高速ネットワークと自信を持って言えるまでにはどのくらいかかりましたか?
尾形:1年ほどかかりました。通信速度と通信量を可視化し、問題の大きいところから優先的に進めました。既存の回線や機器を増強したり、新しい経路を追加するインターネットブレイクアウトを全社展開したりしました。加えて、今後トラブルを起こしかねない古い機器も交換し、リスクのある箇所は徹底的に刷新しました。
酒井:刷新したことで社員の皆さんから何かフィードバックはありましたか?
尾形:これがインフラの悲しいところで(笑)。「ネットワークがすごく良くなったね!」とは言われません。ただ、社外環境で業務した社員から「ネットワークが遅くてストレスを感じた」という声を聞くことがあって、それは逆に、当社のネットワークが快適だという証と捉えています。
通信を可視化したことで、数値としてもはっきり改善が見えています。以前は通信速度が著しく低下し、ほとんど動かない状態になることもありましたが、今では自信を持って、高速ネットワーク環境が整っていると言っていいと思います。