次世代ネットワークを見据えてSD-WAN導入へ
尾形:今後も業務内容や働き方が変わっていくことが想定されますし、セキュリティ強化は企業にとって重要な課題です。しかし、今のアーキテクチャのままではスピード感を持ってそれらに対応できず、運用負荷も高いという課題がありました。
そこで次のステップとして、変化に即応できるネットワークを目指して、SD-WANやSD-LANの導入を進めているところです。これにより、全国73拠点のネットワークをクラウドで一元管理、可視化し、設定変更やファームウェアアップデートも一斉に行えるようになります。回線の選択肢が増えるため、オンデマンドで帯域を拡張、縮小するものを選ぶことが可能です。さらにトラブルシュートを手助けしてくれる生成AIが搭載された対話型インターフェースもあり、期待しています。
酒井:今、そんなのも出てきているんですね!
尾形:そうなんです。トラブルが起きた際にどこに問題があるかを質問すると、大量のログから解析して原因をある程度特定して提示してくれるような、AI機能を備えた製品が少しずつ出てきているんです。IT人材不足が課題となる中、専門知識が少なくても運用したり、迅速なトラブルシューティングができたりする環境を整えていきたいと考えています。
酒井:尾形さんは今、ネットワークだけでなく、インフラ全体を担当されていますが、AIを活用して運用の負荷を減らすような取り組みは他にもありますか?
尾形:社員からの問い合わせ対応の効率化を進めているところです。具体的には、今までは人手で行っていた「過去の対応事例やナレッジを参考に回答の文章を作る」部分を、生成AIで実現しようとしています。インフラ関連の問い合わせは件数が多いので、運用負荷の削減だけでなく、社員の満足度や生産性を高めることもできると考えています。
インフラ全体のログ活用も検討しています。ネットワークに限らず、何かインシデントが起きた際にインフラ全体のログを生成AIで解析し原因を特定できれば、早期解決や調査の効率化に繋がります。AIを積極的に活用し、IT人材不足に対応していきたいです。
クラウドシフトでIT-BCPを強化 サイバー攻撃にも備える
酒井:自然災害やサイバー攻撃が相次いで発生するなか、事業継続の観点ではどのような取り組みをされていますか?
尾形:我々の部署ではクラウドファーストの考え方が根付いており、インフラチームはどこでも業務できる環境整備を意識しています。そのため、既にシステムはほぼクラウド化し、リモートからもアクセスできるようにしているので、たとえ自社の拠点が被災しても、業務継続が可能です。
Microsoft 365などのSaaSは、サービス提供元が高い可用性を担保しているので、あまり心配していません。一方で、SaaS以外の重要システムは障害や災害に備え冗長化し、毎年訓練を行っています。オフィスのネットワークが使えなくなってしまった場合でも、テザリングや場所の移動で業務継続ができるよう備えています。
サイバーセキュリティはランサムウェア対策を最優先にして取り組んでいます。完全な防御は難しいという前提で、侵入を早期検知できるよう、全社でEDRの導入と維持を徹底しています。大量のサーバーやPCがある中、まだまだ人手に頼る部分が多いのですが、着実に進めているところです。