王子HD、1万人超が使うデータ分析基盤を整備──“後発”ゆえに先行企業の教訓を生かしてスピード導入
経営層が発した大号令!「Excel依存」によるデータ活用の後回しから脱却
後発だからこそ先行事例の“失敗”を教訓にした「バックキャスト」
──Domo導入は迅速な全社展開が印象的でした。
小山氏: 今回のDomo導入では、「データを先に整備して、そこから何が見えるか」というアプローチを避けました。なぜなら、それだとスピード感が足りず、コスモエネルギーホールディングス様(Domo経由で成功事例を参考にした企業)の事例にあったように、データ整備に時間がかかって何もものにならないという事態になりかねないからです。
──他社の事例を参考にされたのですね。
小山氏: コスモ様はゴールから考え始める「バックキャスト」で成功したという話を聞き、我々もそのアプローチを取りました。まずはDomoで可視化して、「どういう風な形で可視化ができたら何かいいことがあって、どういうことに気づけるか」という目的を先に定めることから入ったのです。
見たいものがはっきりすると、何を用意しなきゃいけないかが見えやすい。逆に、何を見たいか、目的がない状態でデータを整備すると、目的に対して正しいデータの整備の仕方が全くわからないですからね。
藤川氏:まさにバックキャストですね。先に姿を見せ、裏側のデータは後追いで整備していくというアプローチにならざるを得ませんでした。
──全社的にDomoが展開されている中で、現場レベルでの活用事例はいかがでしょうか。
藤川氏: 現在は、事例を創出している最中です。安定的な活用に至っているわけではなく、上り調子で広がっています。たとえば、発電事業の日報をDomoにしたり、営業進捗の可視化をしたりといった個別事例がいくつか出てきており、これを横展開していく段階です。現時点では、削減効果などの定量的測定の前に、まずは全社への普及を優先しています。
──現在のところ、ExcelとDomoは併用される形ですね。
藤川氏: Excelが完全になくなることはないでしょう。報告書としてExcelは有効であり、Copilotなどの機能も出てきています。Domoとは、今後も併存し、それぞれの効率化が進むことで役割の住み分けが図られていくと考えています。
──データの品質を高めるために今後取り組んでいきたいことを教えてください。
藤川氏:これは数年かかる課題です。Domo導入でトレンドが見えるようになり、経営会議の会話も単月比較から中長期的なトレンドに基づくものに変わってきています。しかし、データには整備ができているところとできていないところの粒度のバラつきがあり、これを是正する必要があります。
また、そもそもITの基盤のあり方自体をどうするのかという課題があります。現在、当社はERPが全社を網羅しているわけではなく、個別最適化されたシステムが乱立している状態です。このシステム基盤をどう整備していくのかという課題が別に存在し、現在はその検討を練っている段階です。2030年頃が一つのターニングポイントになるのではないかと考えています。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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