いよいよ秋本番といった季節になり、EnterpriseZineの記事もかなり出揃い筆者も楽しく読ませて頂いています。今回は、たいていのERP導入プロジェクトで経験するユーザーとの対立と、対立がプロジェクト崩壊につながった失敗ケースとプロジェクトマネージャーの機転で乗り切った成功ケースについてご紹介します。
ユーザーが抵抗勢力にかわるとき、その理由は?
企業の多くは下半期に入り期末に向けて事業計画を達成すべく経営や現場はビジネスにまい進するわけですが、ERP導入プロジェクトなどにおいても、大抵の企業では年末年始や年度替りなどをシステム入れ替えのタイミングとしているところも多いと思います。まさに、この頃からERP導入プロジェクトも佳境に入っていくと言えます。プロジェクトが次第厳しくなっていくなかで必ず表面化するのが、ベンダーとエンドユーザーの対立です。
「ERP導入プロジェクトの成功要因の8割はお客様にある。」
と、筆者は考えています。どれだけ優れたベンダーのコンサルタントを投入したとしても、ERP導入プロジェクトの成否の鍵を握るのは間違いなくお客様です。裏を返せば、失敗する理由もお客様にあるということになるのですが、その失敗を未然に防ぐ腕前がベンダーには問われます。
ERP導入プロジェクトで、プロジェクトが行き詰る理由としてよくあげられるものにエンドユーザー部門との対立があります。これは、プロジェクトを進めていくうちに機能、予算、作業内容など次第に計画とのギャップが出てくることによって生じるものです。これをひとつひとつきっちりと解決できるならば心配することは無いのですが、問題を未解決のまま先延ばしするとこれがプロジェクトの失敗の引き金となるリスクに発展することがあります。
中堅企業のお客様で多いケースですが、ERP導入プロジェクトがある程度進んだところで、突然ユーザー部門の担当者がプロジェクトに出てこなくなるという場合があるのです。これは、本来の業務が忙しくなって兼務するプロジェクトに参画する余裕がなくなったのが理由です。とりあえずできるとこから片付けてなどと、対応を疎かにしているとプロジェクト崩壊の危機を招くことになります。
経理部門や営業部門の担当者がこのような状況に陥った場合、最悪の場合プロジェクト中止や、スケジュールの大幅な遅延に発展し易いようです。ベンダー側の責任者でこうした状況に対処した経験が少ないと問題を先送りしてしまいがちで、最悪ユーザー部門の責任者から「これ以上プロジェクトには協力できない」と一方的な最後通告が出てユーザー部門が突然抵抗勢力となってしまいます。迅速な対処が必要です。
リスクを小さいうちに摘む。問題を先送りしない。小さなリスクが大きな問題となることを予測して、お客様に早期の回避策を提示する。あたりまえのことが難しいのが現実です。
この記事は参考になりましたか?
- ERP失敗の法則~なぜ企業システムはいつも同じところで躓くのか~連載記事一覧
- この記事の著者
-
鍋野 敬一郎(ナベノ ケイイチロウ)
米国の大手総合化学会社デュポンの日本法人に約10年勤務した後、ERP最大手のSAPジャパンへ転職。マーケティング、広報、コンサルタントを経て中堅市場の立ち上げを行う。2005年に独立し、現在はERP研究推進フォーラムで研修講師を務めるなど、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスに従事している。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア