変化を続けるIFRS
2008年6月、金融庁がアドプション(強制適用)のロードマップ案を示したことで、国内においてもIFRS(InternationalFinancial Reporting Standards:国際会計基準または国際財務報告基準)への関心が一気に高まっていった。同庁によれば、2012年にはアドプションの採否が最終決定し、その開始時期は2015年または2016年になる予定である。アドプションという強制力を持った指針が示された以上、対象となる企業は、遅かれ早かれ準備に着手しなくてはならない。
コンバージェンス(融合、統合)からアドプションへの方向転換により、以降、金融庁の企業会計審議会やASBJ(AccountingStandards Board of Japan:企業会計基準委員会)が示す適用要件やガイドラインは、基本的にIFRS本体、すなわちIASB(InternationalAccounting Standards Board: 国際会計基準審議会)の定める会計基準およびその指針を全面的に踏襲したものとなる。
ただし注意したいのは、根幹となるIFRS自体にいまだ変化や揺れが見受けられる点だ。IFRSは、策定にかかわる各国・各機関の意向や、世界経済の状況といったファクターによって変化する、策定途中の会計基準であることを念頭に置く必要がある。最近では、IFRSのコア概念の1つである包括利益の定義にも見直しが検討される動きもあり、論議を呼んでいる。
以下では、そうした「変化を続けるIFRS」の方向性と現在位置をつかむため、本稿執筆時点(2009年12月末)までのまとめとして、英国(およびEU)、米国、日本における会計基準の主要な動きの整理を試みる。自社でのIFRS適用を主導する立場の読者におかれては、本稿の内容を踏まえたうえで、今後の継続的な情報収集、そして適用準備に取り組んでいただければ幸いである。