ビジネスアプリケーションも「UX」が価値を左右する時代
主に企業内で利用されるビジネスアプリケーションにおいて、「UI」はさほど重視されてこなかった。ユーザーはアプリケーションにあわせて使い方を覚えることが当たり前だったからだ。
しかし、インターネットやスマートフォンの普及で、状況は一変する。人々は日常的にさまざまなアプリケーションを利用し、優れたUI/UXを有したアプリケーションに触れる機会が増えた。その結果としてUI/UXに優れたものは選ばれ、悪いアプリケーションは淘汰されていく。ビジネスアプリケーションにおいても同様で、UI/UXの重要性が認識されるようになったのだ。今やアプリケーションベンダーがUI/UXを研究・開発するための専任部隊を持つことも珍しくない。
また、受託開発などを行うSI企業もUI/UXを重視するようになっている。従来、SI企業は要求仕様に基づき、正確に動作するITシステム構築やアプリケーション開発に注力してきた。要求仕様にある機能が正確に動作することが最優先で、多くの場合“UI/UXをより良いものにする”ことは含まれないため、UI/UXを重視したシステム開発を行うことは少ない。
しかしながら先述したように、ビジネスシーンにおけるUI/UXに対する要求は格段に上がってきた。使い勝手の悪いITシステムを使っていれば、従業員満足度が下がってしまい、生産性の低下を招きかねない。このような状況を受け、SI企業もUI/UXを重視したシステム開発へ舵を切り始めている。UI/UXへの注力によってITシステムの価値を高められれば、SI企業の優位性にもつながるからだ。
実際に独立系SI企業であるTDCソフトは、デザイン思考を活用したUI/UXに関わる多様なサービスを展開している。長年培ってきたシステム開発のノウハウに加え、UI/UXデザインの専門知識を持つ人材を育成・獲得することで、新たな顧客ニーズに応えられる体制を構築。UXリサーチからUIデザイン、UI/UXを考慮した開発やテストに至るまで一連のサービスを提供してきた。
TDCソフトのCX&UXデザイン推進部の酒井美彩都氏は、「デザイン専門会社などもある中、SI企業のTDCソフトがUI/UXに力を入れているのは『さまざまな人がUXデザインを利用できるようにしたい』『デザインを次の当たり前にしたい』との思いがあるからです」と話す。
![TDCソフト株式会社 デジタルテクノロジー本部 デザイン&テクノロジーコンサルティング統括部 CX&UXデザイン推進部 担当課長代理 酒井美彩都氏](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/21420/21420_01.jpg)
たとえば同社では、UI/UXを考慮したデザイン開発の「仕組み化」を進めているという。UI/UXを考慮したITシステムを構築後に担当者が抜けたとしても、UI/UXの改善を顧客自らが継続できる。これが同社のサービスの特長だと、酒井氏は強調した。そしてもう一つ、同社が推進するのは「UI/UXデザイン」人材の育成だ。