柔軟性・俊敏性が求められるビジネス
リーマンショック以降の世界経済の悪化から、企業は投資削減、減産、リストラなど、より一層の効率経営を追求し、様々なコスト削減の施策を講じてきた。企業は、コスト削減だけでなく生産性の維持・向上のため、物理的資産を持たない仮想化によるサーバー統合や、SaaSやクラウドの利用ということも視野に入れ始めた。また、クライアント/サーバーモデルによって、分散化されサイロ化してしまったITリソースも、二重投資や管理コストの増大を理由に、集約化・統合化することも急務となっている。
ITバブルのころは、資金調達、業務拡張、市場拡大のために企業統合や買収(M&A)が盛んに行われていた。しかし最近では、不況を背景にした業界再編という動きにあわせたM&Aに状況が変化してきている。経済や市場が縮小する中、「オーガニックグロース(自然成長)」だけでは十分ではない場合、海外市場やM&Aによる成長・拡大は、生き残るための必須の戦略になるといえる。
現在、企業経営に求められるのは、様々な経済環境に迅速かつ柔軟に対応する能力である。新しいサービスや施策を素早く展開し、効果が期待できなければ直ちに撤退しなければならない。企業アライアンスや部署の改変、グローバルパートナーとの連携に対応する柔軟性も必要である。
混沌とした状況を整理する基軸としてのデータ統合
上述したような、グローバリゼーションやM&A、さらにはビジネスプロセスアウトソーシングが加速している上に、様々な法規制への迅速な対応も経営課題になっている。これらの市場動向を鑑みると、企業はあらゆるデータを可視化する体制の確立が急務であり、企業の成長を考える上で鍵となるのは、重要な情報資産であるデータの統合と、その活用であると言えるだろう(図1)。
なぜなら、情報資産の活用の観点からデータに着目すると、企業では基幹システムや業務アプリケーションなどのシステムが乱立し、企業内には様々なデータがばらばらに散在しているケースが多い。元データがどこにあるのか、どのようにシステム間が連携しているのかを正確に把握することは難しく、効果的な情報資産の活用がなされてない。
さらには、機能拡張やメンテナンスの繰り返しで、データを可視化するのが困難な状況になっており、運用や保守にかかるコストを抑制すべく既存システムを見直そうにも、どこから何に手をつけていいか分からない。このような、混沌とする状況を整理する基軸となるのがデータ統合である。
例えば、業務をSOA(Service Oriented Architecture)によってサービス化するためには、ビジネスプロセスの標準化が必要であり、それにはワークフローだけでなく、データのフォーマットや流れも一元的に統合・管理できなければならない。またサーバー統合を仮想化によって実現するには、ストレージやデータベースなどをどのように構成させるかの戦略も必要だ。
企業内の複数システムの統合で最も重要なのは、業務システムごとに異なるデータを戦略的に統合し、それらに整合性を持たせること、およびデータ構造の一元化である。このとき、単に物理サーバーを仮想化してハードウェアを共有させるだけでなく、業種・業態に合わせたデータモデルの標準化ができれば、システム全体の効率化も図れるからだ。
また、データを活用するという視点に立つと、整理・抽出した情報資産をBI(Business Intelligence)によってさらに効率よく利用するという考えもある。BIにおいて重要なのは、正確なデータをしかるべきタイミングで正しく処理することである。判断の基準となるデータの整合性や信頼性に不備があるようでは、適切な経営分析や意思決定は不可能だからだ。そこで、いかなるプロジェクトにおいても課題となるデータ問題への解決方法の一つとして、データ統合プラットフォームが重要になる。
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