御社に重要なのは、商談管理ではないかもしれない
これまでご紹介してきた商談管理はSalesforceの最もポピュラーで強力なユースケースと呼んでもいいと思います。しかし、商談管理がカバーする集客や受注が不要な企業というのはありませんが、事業成長のドライバーとなる重要なポイントは業種・業態によっても異なります。その場合、商談管理の前提となっていたエッセンスを抽象化し、Salesforceの適用範囲を効果的に拡張していく必要があります。
たとえば、調達や提供のプロセスがスケールさせづらいような業態の企業が挙げられます。 商談管理だと片手落ちで受注過多になるか、営業部門のコスト効率が15%上がっただけで売上の成長率はせいぜい数%増に留まるといった結果になるかもしれません。IT投資効果は限定的です。
有形商材の製造販売や、卸など流通機能を含む販売などがこのケースに該当しやすくなります。理由はいくつかありますが、たとえば有形商材で、ロングテール品を卸していくような事業をイメージします。この場合、販売活動は商談管理というよりも、実態として「定期接触活動をメインとするルートセールス化」してることがよくあります。 一口に「営業プロセス」と言っても、「商談プロセスを管理することの付加価値が低い」ケースがあるということです。
この場合、商談でトップラインを成長させるというよりも抜け漏れなく定期接触をして継続受注を獲得できるかが営業部門の役割になります。トップライン成長のアプローチとしては、コストの低いアルバイト人員採用・教育・配置効率化、販売パートナー網の構築、Web販売の強化など、商談管理以外で改善すべきプロセスの候補は多岐に渡ります。

また、高額品/大型品の製造販売業だと生産ラインや在庫管理のキャパシティ(倉庫や配送リソース)が問題になります。キャパシティの拡張=固定費の大幅な増額を意味するので外部環境変化による需要低下があると倒産の危険性が高くなり経営上極めてリスクが高い判断です。
こうした場合、受注「数」増を目指す商談管理の提案、ではなく受注「予測性」を向上し、生産・調達のプロセスマネジメントに繋げる形で応用した方が業績改善へのインパクトがあるでしょう。
Salesforceは、商談管理機能に代表されるSFAで有名なサービスです。しかし、その成功を支えてきた基本的なプロセス管理など、データドリブン・マネジメントのノウハウを体得できれば、各企業ごとに異なる様々なプロセスを変革できるホリゾンタルで汎用的なプラットフォームとなります。
自社の業務プロセスを自発的にモニタリングし、行動を変えていける組織において、AIは単に自動化や効率化に役立つだけではなく、事業の生産性へ直接的に寄与するアクションを支援してくれるようになるでしょう。
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佐伯 葉介(サエキヨウスケ)
株式会社ユークリッド代表。SCSK、フレクト、セールスフォース・ジャパンを経て、2019年にリゾルバを創業。2023年にミガロホールディングス(東証プライム)へ売却。著書『成果を生み出すためのSalesforce運用ガイド』(技術評論社)。一般社団法人BizOps協会エキスパート。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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