音声解析AIへの確信、「大化けする」ビジネスモデル
平井氏がRevCommのビジネスモデルに強く惹かれたのは、「音声のAI解析」に着目した点だった。同氏は、この“音声解析AI”を核としたビジネスを「大化けする」と評価。「桁違いのビジネス成長をもたらすだけではなく、日本企業を中心とした“新たなビジネス価値”を創造できる可能性がある」と話す。
楽天時代にAI戦略を進めたとき、ビジネスの世界において対話・会話が極めて重要であることに気づいたと平井氏。会話は、話したそばから消えてしまう、“揮発性の高い”情報でありながら、非常に大きなインサイトを得られる。この点に着目したRevCommのような企業はなかった、と平井氏は分析する。対面や電話、Web会議など、さまざまなビジネスシーンにおける対話データを「一気通貫でホリスティックに扱える」ことは大きな優位性だとした。

とはいえ、AIを核とした製品・ソリューションが日々増えている中、外資系のIT企業が資金力やマーケットカバレッジで優位に立つ状況だ。この状況下、平井氏は日本企業の強みを「行動様式や美学」に見出している。
たとえば、西洋ではナイフやフォークを家族間でも共有することは普通だ。一方、日本には「個人の箸(My Hashi)」があり、これは非常にパーソナライズされた、きめ細かい日本独自の美学や行動様式の象徴だと平井氏は捉える。このような「きめ細やかさ」こそが日本企業の強みであり、RevCommにはその精神性が根付いているという。
その上で、国内に開発拠点とチームがあるため、経営戦略と営業戦略がプロダクトに迅速に反映されやすい点も強みだと自信を見せる。
COOとして断行する「Go-to-Market改革」の全貌
RevCommで平井氏が注力するのは、「セールスとGo-to-Marketの改革」だ。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、そしてパートナー戦略を2025年7月から大きく再設計した。目標は、顧客にRevCommを知ってもらい、信頼され、さらには「未来を託されるような存在」になることだ。
エンタープライズマーケティングの確立に向けて、インサイドセールスに直結するための仕組みを構築。ここには、かつてMicrosoftやCiscoで共に働いた北川裕康氏が加わっている。また、セールス組織の再編成も進めており、大きくエンタープライズとコマーシャル事業の2つを編成。エンタープライズセグメントではアカウントマネージャーが顧客のすべてを担当しながら、コマーシャル事業ではトランザクションベースで案件を回していく組織として運営していく。
加えて、パートナー事業の変革にも注力する。従来の販売パートナーや紹介パートナーに加え、導入やオペレーション支援を行う「アダプションパートナー」を新設することで、パートナー企業が付加価値を出しにくいという課題を解決することを狙う。これまでRevCommのカスタマーサクセスが担ってきた導入設計や日々のサポートまでをパートナー企業に託し、主体的にビジネスをリードしてもらうモデルを目指す。電話解析AI「MiiTel Phone」、Web会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」などを単独で販売するだけでなく、それらがコンポーネントとして他のサービスに付加価値として載る、エンベデッドで展開できる形を整備していきながら、まずはCRM製品との連携を狙っていくという。
その上でRevCommが担うのは、「音声データレイク」だ。新たに発表された「MiiTel Synapse(ミーテル シナプス)」は、これまでの「電話、Web会議、対面会話の音声解析ができるAI」というツールに、AIコパイロット、AIエージェントを用いて音声データを“経営資源”として活用するためのサービスだ。「これにより『MiiTel』は製品として次のフェーズに移った」と平井氏。その価値を顧客に体感してもらうための場を提供し、顧客が気軽に訪れて“囲まれる”ような関係を築きたいという。その皮切りとして、2025年9月17日にはRevComm初の顧客イベント「Beyond Communication 2025」も開催する。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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