Apache Icebergを採用 オープン性を強調した「Oracle Autonomous AI Lakehouse」
基調講演では、オープンスタンダードの重要性についても言及された。その一環としてOracleは「Apache Iceberg」を採用し、真にオープンなレイクハウスを提供するとして、新製品「Oracle Autonomous AI Lakehouse」をリリースする。Icebergがもたらす、ベンダーへの非依存性とOracle AI Databaseの分析能力を組み合わせた製品で、これまでのデータレイクに対する投資を活かしつつ、ビジネスニーズにあわせてAIのメリットも享受できる。
Oracle Autonomous AI Lakehouseでは、(同データレイク内にある)すべてのデータに対してAIベクトル検索、Oracleの分析SQL(リレーショナル、グラフ、JSON)が利用可能だ。また、OCIやGoogle Cloud、AWS、Azureといった主要ハイパースケーラーで利用でき、DatabricksやSnowflakeとの相互運用も可能となる。
さらに新製品にはIcebergだけでなく、その他多数のデータストアにわたるデータに対して統一的なアクセスを提供する「フェデレーテッド・カタログ」が含まれる。そのため、Oracle SQLのFROM句でIcebergテーブルを指定するだけで、どのカタログ(Oracle、Databricks、Snowflakeなど)で管理されていてもアクセスが可能だ。
AIエージェントによるビジネス変革を実現する「AI Data Platform」
講演には、Oracle AIデータプラットフォーム担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのT.K. アナンド(T.K. Anand)氏も登壇すると、「Oracle AI Data Platform」について説明した。これはAIデータベース上に構築される、データ分析とAIのためのエンドツーエンドのプラットフォームだ。
 
Oracle AI Data Platformの核は、IcebergやDelta Lakeなどのオープンスタンダードに基づいたエンタープライズグレードのオープン・レイクハウス。このデータ基盤上で、Oracle AI Database、Apache Spark、Flinkなどのデータエンジンが提供される。さらにOpenAIやGemini、Llamaといった基盤モデルやPyTorch、LangchainといったAIフレームワークも統合されている。
このOracle AI Data Platformは、OCIのPaaSとして提供され、Autonomous DatabaseやOCI Generative AIサービス、Oracle Analyticsなど複数のサービスを統合。開発者は個々の製品やサービスを連携させる手間なく、ソリューション構築に集中できる点も特徴だ。

データ取り込みでは、バッチETLやOracle GoldenGate、Kafkaなどのストリーミングの他、「Zero-ETL」や「Zero Copy」機能でソースシステムにデータを残したまま“ライブアクセス”できる。プラットフォームは、メダリオンアーキテクチャ(ブロンズ/シルバー/ゴールドレイヤー)をサポートし、ブロンズ/シルバー層はIcebergやDelta Lakeなどのオープンフォーマットで管理され、ゴールド層はAutonomous Databaseでネイティブに管理される。また、マスターカタログによって、全レイヤーにわたりセキュリティとガバナンスを担保できるとする。
さらにOracle AI Data Platformは、AIエージェントの構築・展開のための「Agent Studio」を備えている。Agent Studioで構築されたエージェントやツールは、MCPやA2A(Agent2Agent)といったオープンプロトコルに対応しており、カタログに自動的に登録される。組織内にはOracle Fusion Cloud ERPやSalesforce、Microsoft 365など、さまざまなアプリケーションやプラットフォームで動作する多数のAIエージェントが存在する中、AI Data Platformは実行場所に関係なく、これらのエージェントを“統合カタログ”に登録可能だ。
加えて、ビジネスユーザー向けの機能として「Agent Hub」も提供される。これは組織内のすべてのエージェントに対して、単一の窓口(シングル・ペイン・オブ・グラス)を提供するものだ。ビジネスユーザーは、AIエージェントのカタログを検索することで、エージェントと会話したり、タスクを実行したり、複数のタスクをワークフローに連鎖させたり、複雑な問題解決のためにエージェントチームを作成したりできる。
なお、AI Data Platformは既に一般提供が開始されており、パートナー企業(Accenture、Cognizant、KPMG、PwCなど)は、このプラットフォームを活用するための包括的なトレーニングと業界特化型ユースケースの開発に向けて、総額15億ドル以上を投資することを表明した。また、Oracle Fusion Cloud ERPとOracle NetSuite向けに、事前統合された専用バージョンも提供される計画だ。
AIベクトル検索によるセマンティック検索の実現、SQLエキスパートとしてのAIエージェントの組み込み、そしてエンタープライズデータプライバシーをデータベース層で制御する仕組みなど、Oracleは企業がデータに基づいて「信頼できるAIインサイト」を獲得するための基盤を築いている。この統合戦略とオープンなプラットフォームの提供により、AIが“データから独立して機能する”のではなく、“データと緊密に連携する”ことで真の価値を生み出すためのビジョンを示した。
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                    谷川 耕一(タニカワ コウイチ) EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト... ※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です 
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