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岸博幸が提言する日本のICT政策の課題とコンテンツ産業の未来


日本のICT産業が成長と収益性を実現できないのは、プラットフォームの主導権を米国の企業に奪われているからだという議論がある。日本の企業は、こうした状況をどう捉え、この現実といかに向き合っていくべきなのか。元竹中大臣政務秘書官で慶応義塾大学メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏に、現在の日本が抱えるICT政策の課題やコンテンツ産業のあり方などについてお話しを聞いた。

一番収益性が高いのはプラットフォーム

― 現在、日本のクラウド市場は、外資系のGoogle、Amazon、Salesforce.comなどのクラウド系ベンダーが台頭し、いわば国内のプラットフォームが独占されつつあります。クラウドを巡る国内の状況はいかがお考えでしょうか。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸博幸氏
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸博幸氏

 まずインターネット上のバリューチェーンを考えた場合、端末、インフラ、プラットフォーム、コンテンツ/アプリケーションとあります。冷静に世界の動きを見ていると、一番収益性が高いところはプラットフォームとなっています。

 インフラはなかなか儲かりませんし、かつてコンテンツは儲かると言われていましたが、全くの嘘八百だったと言わざるを得ません。結局、コンテンツはプラットフォームが搾取するための道具だったのです。端末も端末単体ではどうしようもなく、プラットフォームと結びつくことによって初めて価値が生まれます。言い換えれば、プラットフォーム側と端末が融合すれば、これほど強いものはないというのはAppleやAmazonが証明しています。

 そういう前提の中でクラウドの問題を考えてみると、やはりクラウドというのは当然必要です。このようなサービスが増えることは、ユーザー側、企業の側からすればコスト削減につながりますので、今後ますます普及していくべきです。

 ただ一つ、考えないといけないのは、この「情報」というのは、軍事やお金と同様に安全保障の要素が非常に強いということです。実際、米国の政府はクラウドの調達基準として、アメリカ本土の中にサーバーがあることが条件にしています。

 もちろん、本土ですからハワイもだめです。つまり情報の安全性という観点を強く意識しているからだと思います。いまの時代は、10年前に比べても「情報」そのものが飛躍的に国の安全保障やナショナル・セキュリティ、またビジネスの観点からも重要になっています。それは国家の問題だけでなく、その本質は企業でも変わらないと思います。

 実際に、ICTの世界では、サーバーが置かれている国の法律が適用されることになっていますね。極端に言えば、アメリカやジンバブエなどのサーバーにデータを預けて、万が一トラブルが起きた場合は、そのサーバーが実際に置いてある国の法律の下で手続きを行う可能性も十分あるということです。そうなった場合、その対応は十分できていますかという懸念がありますね。

 もちろん、他人に見られても別に困らない情報を預けるならば、それもありでしょう。研究開発段階の製品のスペック情報や経営情報などは企業においての機密情報です。このような情報を雲の向こうのまったく分からない世界に預けて本当にいいのですか、という問題があります。

 もちろん、外資系クラウドのサービスを否定するつもりは全くありませんが、安いから、運用が楽だから、という理由だけでクラウドを利用しましょう、という風潮になってしまうのはあまりにも早計でしょう。そういう意味では、日本のITベンダーにもっと頑張ってもらって、きちんと日本の国内にサーバーがあって、何かトラブルがあった場合には、日本の法律の下ですぐ対応できることが好ましい。

 つまり、情報の安全性がしっかり担保されるという部分をもっと徹底し、コスト的にもアトラクティブになる必要があります。言い換えれば、そこまで徹底しないと、日本のICTベンダーも生き残れないでしょうし、ユーザーの側からも困ることが十分ありうると考えています。

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グローバル化への警笛

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この記事の著者

渡黒 亮(編集部)(ワタグロ リョウ)

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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