コロナ禍が終わり、「業績の回復」から「成長への転換」と戦略の焦点がシフトする中、日本航空(以下、JAL)は中期経営計画「ローリングプラン2025」で、「AI・データを中心としたDX戦略の推進」を大きく掲げ、達成に向けての努力を続けている。その中心的役割を担うのが、2022年4月に立ち上げたデータ分析専門組織だ。この体制でどんなことに取り組んできたのか。メンバーたちに詳細を聞いた。
コロナ禍真っ只中に発足した「専門組織」が担う変革の一翼
JALはデータドリブン経営の実現を目指し、2022年4月にデータ分析の専門組織「顧客データ戦略室」をカスタマーエクスペリエンス本部下に設置した。当時は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、国内線、国際線ともに需要回復の兆候が見えていない時期だ。航空会社にとって非常に厳しい経営環境から新組織はスタートを切った。
同室のミッションは、顧客データを活用し、データドリブンな意思決定プロセスを確立すること。「分析施策の実行」「仕組みの整備」「人材育成」の3つを活動の柱としている。
出典:日本航空
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2025年12月末時点における顧客データ戦略室の在籍メンバーは約20名、兼務のメンバーを含めると30名弱の体制で、以下の3つのグループでJAL全体の事業価値創造に貢献する取り組みを進めている。
- 事業推進グループ:路線事業本部、ソリューション営業本部、マイレージ・ライフスタイル事業本部など、事業部門と共同での顧客データの分析、および施策の企画、実行、評価を行う
- 企画グループ:データ統合やより高度な分析のためのデータ分析基盤の整備と運用を行う。また、JALの求めるデータ分析人材(データサイエンティスト)の育成を行う
- CX推進グループ:顧客体験、従業員体験、ブランド価値、およびNPS(Net Promoter Score)向上に向けてのデータ分析を行う
もちろん、組織発足前から、JALはデータ分析を行なっていたが、事業側独自での取り組みにとどまっていた。中野峻介氏(カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部 顧客データ戦略室 企画グループ 兼 事業推進グループ)は、当時の問題点を2つ挙げる。
1つは、データ分析が個別最適化していたこと。他部門のデータへのアクセスは困難をともなっていた。たとえば、ある顧客がどの路線をよく利用しているかは把握できても、同じ顧客が「JAL Mall」でどんな商品を購入しているかまではわからない。逆も同様で、航空系と非航空系で顧客理解が分断されていたのだ。もう1つは、データ人材を組織全体で育成しようとする機運が高まっていなかったこと。JAL全体として、データ分析は外部の専門家に任せる、あるいは社員の自発的な奮起と努力に委ねるところがあったという。
日本航空株式会社 カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部
顧客データ戦略室 企画グループ 兼 事業推進グループ 中野峻介氏
しかし、コロナ禍で沈んでしまった事業を再起させるには、航空系と非航空系の垣根を越えた組織横断的な顧客データ分析を行う環境の整備が急務であった。そこで、約4000万人のJALマイレージバンク(JMB)会員およびJALカード会員のデータを共通基盤に統合し、専門組織としてその運用を行う体制としてできたのが顧客データ戦略室である。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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