事業側と協働できるプラットフォーム導入で、確かな手応え
人材交流は、データ分析手法の標準化にもつながる。これを可能にしたのが、顧客データ分析のために整備した共通基盤だ。そのためにJALは「Dataiku」を導入した。JAL全体では、「空港などサービス現場のユーザーが使うもの」「事業本部所属のユーザーが使うもの」「顧客データ戦略室のユーザーが使うもの」といった3種類のデータ分析基盤を運用している。Dataikuは、より高度なデータ分析を行う目的で利用するものとして位置付けられているという。
採用の決め手は、データ分析の初心者とデータ分析のプロが混在していても、同じ環境で結果を共有できる協働が可能なこと。たとえば、コードを書かなくてはならない場合、事業側の初心者にコーディングを求めることはできない。しかし、データ分析の目的意識は明確に持っている。代わりに、顧客データ戦略室側でコーディングをサポートする役割分担にすれば、ワンチームで関係部署と連携してのデータ分析ができる。ノーコードからプロコードの分析に対応できることが評価された。
事例として、非航空系のマイレージ・ライフスタイル事業のユースケースに、メールマーケティングのターゲットセグメントの抽出から配信リスト作成までを行う仕組みをDataikuで構築したものがある。顧客データ戦略室は、JALが提供している様々なサービスのデジタルフットプリントのデータを使い、リードスコアリングモデルを構築し、事業側のマーケターは、スコアの高い顧客を抽出し、配信リストを作成する。「顧客の興味関心に合わせたメールを受け取ることになるため、一斉配信よりも顧客体験は向上する」と大野氏は効果を語る。
日本航空株式会社 カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部
顧客データ戦略室 事業推進グループ大野暉宙氏
また、航空系のユースケースでは、ロードファクター(有償座席利用率)と利益の2つを見られるダッシュボードをDataikuで構築し、路線事業に提供している。JALでは、通常の割引運賃とは別に、より割引率の高い運賃を売り出す「タイムセール」を不定期で実施している。空席が多いのは良くないが、タイムセールをやることで空席が少なくなりすぎても良くない。事業側には、この価格なら購入しても良いと思える価格設定、かつ収益性を最大化できる販売時期、販売座席数を見極めたいというニーズがある。本来、PDCAサイクルを回しながら最適化していくものだが、PDまではできても、CAができないまま時間だけが経過してしまう悩みがあった。それを「ダッシュボードを提供したことで、事業側はCAから次のPDへの移行が容易になった」と諸岡氏は話す。
この記事は参考になりましたか?
- DB Press連載記事一覧
-
- 回復から成長へ──コロナ禍発足のJALデータ専門組織が「事業知見×分析力」の両翼で描く、内...
- AI時代のデータ分析、最後に問われるのは「人間力」 DMMの実践知に見るデータ専門職の新た...
- AIエージェント時代に人が定義すべきデータの「意味と信頼」とは──大阪ガス/IDC/ZAI...
- この記事の著者
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
