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冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス

AIエージェントの現況・課題はSaaSブームの頃に似ている──企業が構築すべき次世代のIT環境とは?

Mulesoftの幹部が予測する、AIエージェント運用で顕在化するニーズ

今のAIエージェントの状況は「SaaSブームの頃に似ている」

 今は人間とAIエージェントの間に体験格差がある状態だが、これまでAPI連携の基盤を提供してきたMuleSoftはこの状況を改善し、「我々の顧客はビジネス成果の獲得で先行できる」とコムストック氏は訴える。

 とはいえ、既存の顧客はAI活用を視野に入れてMuleSoftを導入したわけではない。MuleSoftもこれまでは、多くのSaaSを採用し複雑化した企業内のテクノロジースタックに対し、相互接続の手段を提供することに重きを置いていたという。

 ただし、同社のビジネスにおける初期と現在とでは、多くの共通点があるとも指摘する。今でこそ、SaaS同士のデータを相互利用するためにMuleSoftのような統合ツールが利用できるが、ツールを利用しない場合、開発者が個々のSaaSの仕様に合わせてインターフェースを開発しなければならない。その都度開発するのは負担が大きく、開発者にとってやりがいのあることでもない。

 企業内にAIエージェントの種類と数が増えてくれば、SaaS導入時と同じ悩みに直面することになるだろう。そこで、「SaaS活用のためにMuleSoftを導入した企業は、AIエージェント活用でも同じようにMuleSoftを役に立てられると確信している」とコムストック氏は語った。

 MuleSoftのような統合ツールの市場には競合も多い。他社製品に対する競争優位性として同氏は2点挙げた。1つは、APIファーストのアーキテクチャを採用していること。そしてもう1つは、オープンスタンダードに準拠した接続が可能であることだ。SaaSブームの頃から、MuleSoftはAPIを統合のためのキーテクノロジーとして重視してきた。ユーザーがこれまで利用してきたAPIは、AIエージェントもすぐに利用できる。

 そして、前述のAgent Fabricの4つの柱の1つである「ガバナンス」への対応も万全だと述べた。AIエージェントのガバナンスは展開初日から必要なもので、スケールさせるタイミングで対策を講じようとしても遅い。かつてRPAが普及した時、野良ロボット問題を指摘する意見があった。ガバナンスが考慮されていなければ、インフラにトラブルが発生した場合の対応が難しくなる。また同じ失敗を繰り返すことは避けたい。MuleSoftでは、AIエージェントとシステム、AIエージェント同士のやり取りを信頼できるよう、新機能の提供時にはガバナンスを重視している。

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海外ではマルチエージェント体制を運用している企業も

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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