ネットワークストレージにとって仮想化は特別なものではない
ネットアップの仮想化についての戦略だが、実はそれをあまり意識しているということはない。ネットアップの製品は、他社のストレージ製品とは異なった実装技術やアーキテクチャを持っている。そのため、大容量のストレージを構成する場合のコントローラとそれに接続されるストレージの管理機構が、そもそも「仮想化」の概念を取り入れたものである。したがって、ネットアップのストレージ製品においては、RAIDの構成方法やボリュームの考え方が、物理構成に縛られることがない。
ネットアップのルーツは、1992年に創業者がストレージにNFS(Network File System)を実装したアプライアンス製品を開発、販売したことから始まるが、当時はワークステーションにディスクを接続してファイルサーバーを構成するほうが一般的だったため、ディスクにネットワークファイルサーバー(nfsd)のソフトウェアを実装してしまうというアプローチは特殊だった。しかし、このコンセプトは現在の製品でも受け継がれ、前述のような製品設計に影響を与えている。
仮想化によってボリューム構成やRAID構成に自由度を与える
たとえば、FC(Fiber Channel)で接続されたストレージシステムでRAIDグループを構成する場合がある。このとき、従来のストレージであればボリュームはRAIDグループの物理的な構成に制限されてしまい、複数のRAIDグループにまたぐようなボリュームが構成できない。しかし、ネットアップのストレージはこれが可能だ。また、シンプロビジョニングと呼ばれる機能で、実際の物理容量より大きなボリュームを柔軟に構成することもできる( 図1)。FlexVolという仮想ボリュームのソフトウェア機能がこれを可能にさせている。背景にはストレージを仮想化する技術があるが、ネットアップとしては6 年も前から実現している機能だ。
また、サーバーを仮想化によって集約するだけでなく、クラウド技術によってクライアント環境も効率化するため、仮想デスクトップ環境を実現するソリューションが注目されている。この機能を実現するために重要な技術は、OSイメージやアプリケーションプログラムの実行イメージなどを素早く個々の端末、もしくは仮想環境にコピーする技術だ。ソリューションとしては、FlexCloneというソフトウェアを用意している。
FlexCloneでは、親ボリュームのコピーを瞬時に作成することができる。複製の数は展開するストレージの容量次第だが、その間、親ボリュームのアクセスが停止するなどということもない。また、複製ボリュームに対して、格納されたアプリケーションのアップデートや、複製ごとに別々に行われるデータ更新も正しく処理されるが、更新は差分情報で管理されるので、各複製に必要なディスクのサイズは親ボリュームの10%前後で済むことができる。このような機能を実現できるのは、ストレージのアーキテクチャが仮想化の概念を取り込んでいるためだ。