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BtoB SaaSは死ぬのか?生き残るのか? AIエージェント時代のアプリケーションビジネスの未来

「SaaS is Dead(SaaSの死)」を考える

時代遅れとなった「シートライセンス」モデル 成果型が主役に

 もう一つ、株式市場がNoを突きつけたのは、大手SaaSベンダーのビジネスモデルである。AIエージェントの台頭でライセンスモデルが時代遅れになり、今後のビジネス収益における成長が鈍化するのではないかという懸念が株価下落に影響したとの見方だ。

 SaaSが多くの企業から支持されてきたのは「シートライセンス」、すなわち利用ユーザーや端末数(シート=座席)に応じた課金形態のおかげでコスト管理が容易であり、ビジネスへの貢献を可視化しやすかったことが理由だ。オンプレミス環境で動くパッケージアプリケーションのライセンス体系の主流はCPUライセンスであった。ソフトウェアが稼働するサーバーの物理CPU数あるいはコア数に基づき価格が決まるもので、ユーザー数を問わず、定額料金で利用できるメリットがある。

 しかし、インフラに近い領域のソフトウェアならばともかく、本来ビジネスへの貢献度でROIの評価をするべきアプリケーションへの投資が、稼動するサーバーの調達スペックで決まってしまう。このことに違和感を表明していたCIOがいたこと、それを筆者は今でも覚えている。実は、オンプレミス時代にもシートライセンスを採用していた企業が一部には存在する。その代表例がNamed Userライセンスを採用していた「PeopleSoft(2005年1月にOracleが買収)」だ。同社のアプリケーションはHR業務を対象としており、その業務特性上からCPUライセンスよりも、管理対象ユーザー数に基づくライセンス体系のほうが顧客にとって納得感があるものだった。

 本格的にSaaSの時代が到来すると、オンプレミス時代には難しかったユーザーの利用実績を把握しやすくなり、顧客にとって人数分だけを支払うという納得感のあるシートライセンスが業界標準として確立していった。また、スモールスタートから価値を実感してもらい、そこから拡張していくことも容易だ。カスタマーサクセスは、SaaSベンダーにとってARR(Annual Recurring Revenue)の予測可能性につながり、投資家への収益成長を説明する良い材料になっていた。今回、特に2026年2月の株価下落につながったのは、人間が使うことを前提とするシートライセンスが、AIエージェントに適用することが難しいとの共通理解が定着したためだろう。ログインなしで処理を実行するエージェントの利用実績をシート単位で測定できない。

 代わって注目されているのが、「アウトカム(成果)ベース」のライセンスである。カスタマーサポートであれば、解決したチケット1件、セールスであれば商談化したリード1件という具合に、顧客は成果に対する報酬を支払う。企業にとっては納得感のある良いライセンス体系に見えるが、普及には課題が残る。

 変動費で予算確保が難しくなるだけでなく、エージェントが成果を出したのか、その行動を検証するためのコストが発生する懸念もある。当面、ベンダーはシートライセンスを柱に据えて、アウトカムライセンスを併用するような「ハイブリッドモデル」で収益性の安定化を狙うことになるだろう。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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