AIエージェント時代、“染みだす”情シスになれ──おざけんが語る組織の未来と我々に求められる変化
“人嫌い”なんて言っていられない 今後やってくる「裸の戦い」を勝ちぬくためのスキル
AIエージェントによって“存在意義”が消える企業、そうでない企業
──昨年からのAIトレンドとして、「AIエージェント」があると思います。AIエージェントという言葉の定義が、企業によって異なる印象も受けますが、小澤さんはどのように捉えていますか。
生成AIが脳だとすれば、AIエージェントはそこに手足が加わったものだと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。人間でいうところの頭脳・記憶・手足はそれぞれ、頭脳が大規模言語モデル(LLM)、記憶がRAG(検索拡張生成)、手足が各種プログラムやAPI連携に当たります。
従来の生成AIは情報の提供や提案や推奨はできても、実際の操作や実行はできませんでした。しかしAIエージェントなら、カレンダーへの登録やメールの送信、スライドの作成などもできます。
──AIエージェントは、社会や産業にどのようなインパクトをもたらすと思いますか。
昨今、アメリカではスタンフォードやハーバードなどの大学を出ても就職先が見つかりにくくなっています。つまり、人を前提に組み立てられてきた組織のあり方そのものが変わろうとしているのだと思います。
特に、情報産業は根本から変わるでしょう。たとえば、不動産探しや転職、キュレーションメディアなどは、情報が見つかりにくいから存在してきたわけで、AIエージェントが人の仲介を代替できれば存在意義を問われます。逆にいえば、一次情報を持つ企業は強い。転職エージェントなら求職者の膨大なプロフィールデータを価値の源泉として、競争力を高められるはずです。
ハードスキル時代の終焉、今後は「裸の戦い」の時代へ
──AIエージェントの普及で、人材の評価基準も変化していくのでしょうか。
はい、AIエージェントによってハードスキルの重要性が下がり、ソフトスキルの重要性が上がると僕は考えています。資格や検定で定義できるハードスキルは、形式知として体系化されているので、AIに代替されやすい領域です。特定のハードスキルに固執しすぎていると、取り残されてしまうでしょう。
これからはAIを活用すれば、マーケティングやプログラミング、デザインなどで、誰でも一定水準のアウトプットを出せるようになります。そうなったとき重要なのは、私が「裸の戦い」と呼んでいるベーススキル。課題解決能力や論理的思考力、対人折衝力、情報伝達力といったスキルです。
そうしたスキルを使って、目的を決め、逆算して設計さえすれば、実行はAIエージェントが担ってくれる。サービスにおける機能や品質で差がつかなくなる時代に、最後に問われるのはブランド力です。たとえば、ただの味噌ラーメンではなく「ヒカキンが作った味噌ラーメン」だから売れる、といった具合に“誰が作ったか”で選ばれるようになっていくでしょう。
──AIエージェントと共に成長していけるのは、どういう企業や組織だと思いますか。
これからは、社内の形式知と暗黙知をデータに変換し、AIエージェントが活用できる形に整えられる企業が成長していくと思います。AIは80点のアウトプットは出せますが、そこを100点に上げるには現場の暗黙知が欠かせません。
最近注目されるコンテキストエンジニアリングも、プロンプトの工夫だけでなく、前提知識や社内ドキュメントをAIに適切に渡せる仕組みを設計していくアプローチです。また、ビジネスにおける“コアメンバー”の重要性は今まで以上に増すでしょう。たとえば、AIの影響で社員100人の会社が20人規模に縮小されるとしたら、その20人は「目的を決め、会社のストーリーやブランドを作っていける」人材だと思います。
最近、日本の総合職は世界最先端の働き方のモデルではないかと感じています。総合職でスキルを会得することはすなわち、特定の専門性に閉じることなく全体を俯瞰でき、社内の力学や背景を読み解く力があり、長年蓄積された関係資本ももつゼネラリストになれるということ。AIが“点”の作業に強いのに対し、総合職は“面”で仕事を動かす力が強い。これは、AIが模倣できない統合力です。
また、日本型経営の特徴も再評価される余地があると思います。終身雇用は心理的安全性のもとで暗黙知の長期的な蓄積を可能にし、年功序列は過度な競争を抑え情報共有を促し、稟議による合意形成が組織を動かしてきました。個人の能力に依存するのではなく、組織の知性を最大化してきた日本型経営は、AIエージェント時代にあらためて評価されるはずです。
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古屋 江美子(フルヤ エミコ)
フリーランスライター。大阪大学基礎工学部卒。大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、顧客管理システムの運用・開発に従事したのち、ライターへ転身。IT・旅行・グルメを中心に、さまざまな媒体や企業サイトで執筆しています。Webサイト:https://emikofuruya.com
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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