AIエージェント時代、“染みだす”情シスになれ──おざけんが語る組織の未来と我々に求められる変化
“人嫌い”なんて言っていられない 今後やってくる「裸の戦い」を勝ちぬくためのスキル
“人嫌い”なんて言っていられない 情シスがAIエージェント時代に必要なスキル
──AIエージェント時代に情報システム部門はどう変わっていくべきでしょうか。
まず、人事との連携を深める方向に変わっていく必要があります。社内でAI活用を推進していくにあたり、今後肝となってくるのは間違いなく人事です。人材採用のみならず、組織の働き方の未来を考えるうえでのカギが人事ですから。
情シスと人事は、いわば“AI導入の両翼”です。生成AIの活用を社内に広げるための教育や社内PRなど、人事との協力がますます重要になります。AIが人のように働く時代に、両者を分ける意味は薄れていくはずで、個人的には人事と情シスは同じ部門にしてもよいだろうと考えています。
また、これまでのDXの常識が通じないことも肝に銘じておくべきです。「経費精算の時間削減」のような定量的なKPIだけでは、AIの効果は測れません。メールの文章や資料の質が上がったといった、数字に表れにくい定性的な変化を捉える力も求められます。
生成AIもといAIエージェントは、入れて終わりではありません。むしろ、入れた後の取り組みが非常に重要。情シスの中にはいわゆる「人嫌い」の方もいるかもしれませんが、そこは今後克服していかなければいけない部分です。数字で計れる定量的な効果だけでなく、人とのコミュニケーションを経て得られる定性的な効果も認識できる能力が必要になってきますね。
たとえばJALでは、生成AI推進チームのメンバーがプラカードを掲げて社員食堂で活用を呼びかけています。数値的に効果が計れるかはわからなくとも、人とのコミュニケーションなどを通して浸透を目指す姿勢が秀逸です。
そのほか清水建設では、担当者が少人数の説明会を各オフィスで開催し、現場主導で既に数千のAIエージェントが生まれています。関西テレビでも、エレベーターにAI活用を促すポスターを貼っていました。
共通しているのは、「泥臭い努力を地道に続けていること」です。「こんな施策やっても意味がない」と最初からNoを突きつけるのではなく、まずはとにかくやってみる。技術やシステムの前に“人”と向き合い、組織のマインドを変えていくことが重要です。
外に“染みだす”情シスになれ
──今後、“AIに代替されない”人材になるために必要なことは何でしょうか。
これは、けっこう難しい問題です。AIエージェントが進化していけば、現場業務のほとんどが代替され、現場の人間は必要なくなっていきます。これは、AIの本質でありグロテスクな現実でもありますね。
もちろん、組織の中でも思考力をもって実践できる人材は必要ですが、せいぜい10%程度で事足りるんです。なので、個人のキャリア論という側面で話すのであれば、その10%に入るために「思考力を磨きつづけること」は絶対に必要です。これからのビジネスをリードしていくのは課題を発見し、目的を決め、逆算して言語化する力をもつ人材なので。
一方、経営論という側面で見れば、社員全員が高い思考力をもつ必要はなくなってきます。営業メールの文章一つとっても、AIエージェントで品質を統一したほうが、組織全体のアウトプットは上がりますから。全員の能力の水準が一定に保たれる、いわゆる日本の義務教育のような姿が企業全体のあり方としては理想になってくるのかもしれません。まずは、そこを認識することが大事なのではないでしょうか。
──最後に、AI活用の推進に取り組むITリーダーへメッセージをお願いします。
「情シスの壁を作るな」とお伝えしたいです。「ここまでが情シスの仕事」と業務範囲を区切ってしまうのが、今や間違いなのです。生成AIを組織全体に広げるには、広報活動から人材育成、組織文化の変革まで全方位的な取り組みが必要で、今後は範囲を決めずに、外に“染みだせる”情シスこそが活躍できるでしょう。
AIエージェントを最大限活用するには、データの整備も欠かせません。社内のチャットに「A社からいくら受注した」と書かれていても、日付や案件名などのメタデータが紐づいていなければ、AIエージェントは活用できません。特に社内にしかない暗黙知やノウハウはAIエージェントに受け継がせるべき資産ですから、言語化・形式知化してAIに学習させていく取り組みを、ぜひ意識的に進めていただきたいです。
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古屋 江美子(フルヤ エミコ)
フリーランスライター。大阪大学基礎工学部卒。大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、顧客管理システムの運用・開発に従事したのち、ライターへ転身。IT・旅行・グルメを中心に、さまざまな媒体や企業サイトで執筆しています。Webサイト:https://emikofuruya.com
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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