接客現場でAI実用の先陣を切る──「JINS AI」スピード開発から旗艦店で実装まで1年間の軌跡
第47回:株式会社ジンズ グローバルデジタル本部 ITデジタル部 事業基盤課 黒尾玲奈さん
「AI元年」の役目果たす 本番稼働につながった成功要因
酒井:ジンズでは接客の質を5段階のレベルに据えていらっしゃるそうですね。「JINS AI」は今、どの段階なんでしょうか。
黒尾:レベル1~2は、お客さまの意図を理解して、それに合う商品を提案できる段階。「JINS AI」は今、ここをクリアしようとしているところです。レベル3~4では、購買に至るまでの思考プロセスをパターン化してAIに組み込みます。「これはちょっと違う、次はこういうのが見たい」といった、言葉になりきらない細かな要望を汲み取って、対話のラリーを続けられるようになります。
そしてレベル5は、購買履歴やお顔の特徴まで踏まえて、その方の消費スタイルごと理解するパーソナライズの世界です。人間で言えば、お客さまごとの引き出しを持っているベテラン店員の域ですね。AIがそこまで行けるかは分かりません。でも、その手前のレベル3~4までは、絶対に目指したいんです。
酒井:「JINS AI」の開発を通じて得た、一番の気づきは何ですか。
黒尾:この1年半で痛感したのは、「LLM自体がものすごい勢いで進化する」ということです。開発当時は、AIの出力を制御するために、強めのプロンプトで分岐フローをすべて自分たちで作り込みました。今のLLMなら、その多くを自分でこなしてしまいます。ですから今では、LLMは進化するものだと割り切って、変化に応じて軽くスクラップ&ビルドできる構成にしておくのがいいのではないかと思っています。
酒井:本番運用を開始した今、AI推進室はどういう体制なんですか?
黒尾:実は、2026年4月に発展的解消をしました。
酒井:展開が早いですね!

黒尾:3人でスタートしたチームは6人まで拡大しましたが、「JINS AI」の本番稼働を節目に役目を終えました。「AI元年」は終わり、AIを使うのはもう当たり前。だったら専門部署をわざわざ構え続ける必要はない、という判断です。私は今、情報システム機能やECも担うITデジタル部に移り、「JINS AI」のサービス改善と運用を続けています。
酒井:最後に、新しいことに挑戦しやすい文化を作るには、何が必要だと思いますか?
黒尾:一つは、経営陣のオーナーシップ。もう一つは、挑戦する人をサポートする文化です。「周りに挑戦している人が多いこと」と言い換えてもいいかもしれません。挑戦って、やってみると本当にエネルギーがいるんですよ。それでも私が手を挙げられたのは、ジンズに「挑戦するのが当たり前」という空気があるからです。経営陣の後押しと、実際にそれを進めようとする組織。その両方があって初めて、挑戦は形になるんだと思います。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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