ITトレンドの新しい潮流と企業の課題
いまや日本でGoogleのツールを使ったことがないという人は少数派だろう。2006年のyoutube買収以降、Googleはクラウドサービスのトップランナーとして認識され、今でも「世界中の情報を検索し、使えるようにする」というミッションのもと、ユニークな発想に基づく新たなサービスを提供し続けている。
ビジネス向けのGoogleエンタープライズ部門も急成長を遂げ、現在Google Appsをはじめとする4つのサービスを展開し、実績を重ねている。これらは、Googleがコンシューマサービスとして展開していたものをブラッシュアップし、ビジネス用途に特化させたものだという。藤井氏は「いまやビジネスよりもコンシューマのIT活用の方が進んでいる。Googleの進化はコンシューマテクノロジーの進化ともいえるだろう」と解説する。
他にも高速化が進むインフラ環境や、iPhoneやfacebookなどの高いサービスにもみられるように「コンシューマテクノロジーの急成長」はまさにITトレンドのひとつだ。そして第二のトレンドとしては、PCの出荷台数を抜いたといわれる「モバイルインターネットの爆発的な普及」が上げられるだろう。
藤井氏は、こうしたトレンドを踏まえ「コンシューマ側の環境はビジネスの現場に比べて格段に進化している。さらにモバイルという端末が普及した社会で、企業はコンシューマのニーズにどのようなサービスで応えるのか。企業は自己改革を迫られている」と問題を提起した。その答えを導くヒントとなるのが、第三のトレンドである「クラウド・コンピューティング」にあるという。
クラウド導入議論におけるメリットと障壁の変化
これまでクラウドの活用においては、様々な議論が行なわれてきている。はじめコストメリットが注目され、技術革新や生産性向上などの効用に関心が移り、導入を躊躇する要因についても、機能不足から自由度の低さへと議論の対象が変化してきた。現在では、構造的な変革の時期とみてクラウドを推進しようという機運が高まりつつも、漠然とした不安が拭えないでいるという。
藤井氏は「セキュリティも可用性もGoogleの品質は、世界随一の水準にある。それをロジカルに理解しても残る感覚的な”気持ち悪さ”が足を引っ張っている」と分析する。「データが”向こう側”に行ってしまうことに対して違和感がある」というわけだ。
クラウドに対する心理的な障壁を乗り越えた時に得られるもの。まず第一に上げられるのがデータ管理の効率化だろう。年々増大するデータを格納し、瞬時に必要なものを取り出して使う。クラウドと検索システムの組み合わせでそれが実現する。
”向こう側”に置くのを恐れて手元に保管するのでは「膨大なデータの管理に追われて、情報に飲み込まれてしまう」というわけだ。また、クラウドという共有スペースを活用して多くの人々が同時並行で作業を行うことが可能になれば、作業の品質とスピードを大きく向上させ、企業価値を高めることもできる。