“作って終わり”のその先へ──大和ハウス工業が事業成果までを追う「事業DXチーム」を発足
第48回:大和ハウス工業 経営戦略本部 デジタル戦略部 企画統括室 企画グループ 事業DXチーム 苧野遥那さん
問題が起きた時こそ早めの共有 調整力を磨いた「PMの極意」
酒井:苧野さんは新卒入社後、5年間の基幹システム開発・運用保守を経て、約5年間プロジェクトマネジメント(PM)に従事されたそうですね。何が大変でしたか?
苧野:様々なステークホルダーとの調整です。事業部の要望が複数システムにまたがれば、各システムの主管部門にヒアリングが必要ですし、開発ベンダーさんとの間では課題が絶対に出てくる。納期とコストの調整は大変でしたね。
特に苦労したのは、工場の先行手配業務をFAXからWeb化する大規模プロジェクトです。私には初めての分野で、ナレッジも周辺システムの知識もなく、業務フローも分からない。それに、周辺システムとのデータ連携部分の開発も必要でした。要件を詰める場面でも、検証やテストデータの準備でも、事業部の方や同じ部の担当者に本当に助けられましたね。そして、常に何か問題が起きるので、調整の日々でした。
酒井:PMって思い通りにいかないことの方が多いですか?
苧野:基本、毎日問題が起きますね(笑)。開発中は現物が見えないので、進捗って正直、ごまかすことができてしまうんですよ。だから毎日15分のショートミーティングをして、プロジェクト管理ツールで進捗を可視化していました。たとえば、1日の進捗が0.2日だとだいぶ少ないので、他のトラブルに専念していたのか、行き詰まったのか、何かあったんだなと分かる。「他の人が支援できる状況ですか?」「こちらで何か支援できることはありますか?」という調整をしていました。
ベンダーの皆さんから「できない」と言われることもありますが、そこで終わらせず、どうやったらできるかを考えました。運用の手作業でカバーするのか、コスト内で収まるのか、追加開発すればできるのか。代替案を出して、追加コストや運用でのカバーが必要なら事業部と話をして、完成のためにどうするかを調整していました。

酒井:事業部やベンダーの皆さんとの信頼は、どのように築いていったんですか?
苧野:事業部の皆さんには、問題が起きたときこそ早めに共有していました。ただ「問題が起きた」だけだと相手も不安になってしまうので、対応策とセットで伝える。初めて会った方には特に、プロジェクトが順調でも「今はこんな進捗ですよ」と、なるべくこちらから会話をするよう心がけていました。
ベンダーの皆さんに対しても同じです。問題が起きたとき、なかなか言いにくいですよね。だから「いつでも電話してくださいね」と伝えていました。ボトルネックが見つかったら、すぐに関係者を集めて調整する。本当に、コミュニケーションが大事ですね。
酒井:PMとしての5年間で、自分の成長を感じたことは?
苧野:人見知りがなくなったこと、ヒアリング力やコミュニケーション力が高まったことです。いろんなジャンルを担当するので、ベンダーさんも事業部も初めて会う人ばかり。緊張もするんですけど、強くなりました。あとは、自分から動かないとプロジェクトは動かないので、主体性が身につきました。
それと、案件が終わるごとに「何が良かったか、何が悪かったか」を振り返って、次の案件に活かすサイクルを重視していました。PMって、人によってやり方が全然違うんです。だから他の人の振り返りを聞いて「この人のここを真似してみよう」と取り入れたりもしました。「苧野さんがPMをやってくれてよかった」と言っていただけたときは、本当に嬉しかったですね。
営業志望なのに情シスへ……やがて気づいた“社内営業”の側面
酒井:苧野さんは、もともと住宅営業志望で新卒入社されたとうかがいました。情シス配属には抵抗がありませんでしたか?
苧野:1年目はすごく抵抗がありました。文系出身で専門知識もなく、システム開発なんて何もできなくて、OJTで教わりながら徐々に仕事を覚えていきました。そして、2年目、3年目と任される業務が増えていく中で気づいたんです。開発するにも、事業部の方にヒアリングして、調整して、ニーズに応える。相手がお客さまか社内かが違うだけで、情シスは社内営業に近いのかなと。
ただ、営業は数字が求められる仕事です。情報システム部時代は管理部門なので、数値を求められることはありませんでした。それが今、デジタル戦略部になって「この施策でいくら下げました」という売上やコスト削減の成果が求められる。より営業に近づいてきたなと、最近思っています。

私は今でも開発技術や専門知識に長けているわけではありません。でも、AIをはじめ日々変わっていく新しい知識を学びたいという意欲や、誰かの役に立つシステムを作りたいという思いがあればやっていけると思います。私自身、チームや部内のメンバーに本当に助けられてここまで来ました。「知識がないとできないんじゃないか」と身構えなくても大丈夫です。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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