“武闘派CIO”からバトン受け継ぐ、コープさっぽろの新・デジタル推進本部長が語る「IT民主化」の手応え
第49回:コープさっぽろ 執行役員 デジタル推進本部 本部長 中内愛さん
生活協同組合コープさっぽろで、職員1万5000人規模、関連会社47社のグループのデジタル戦略を率いる中内愛さん。ITベンダーでエンジニアとして経験を積み、コープさっぽろがDXに大きく舵を切った2020年に入協した。2026年6月に、前CIOの長谷川秀樹さんからバトンを受け、執行役員 デジタル推進本部 本部長に就任。「変わったのは肩書だけ」と謙遜する中内さんに、ITの民主化からセキュリティ戦略まで、じっくり聞いた。
エンジニアとして入協、“武闘派CIO”の背中から学んだこと
酒井真弓:中内さんが、ITベンダーからコープさっぽろに転職を決めた理由は何だったんですか?
中内愛:前職は大規模で期間の長いプロジェクトが多かったんです。作っているうちに新しい業務やマーケティングが始まってしまうこともしばしばで「自分たちのやっていることが、そのスピードに合っていないんじゃないか」という疑問がありました。それなら自分で作って、自分でクイックにリリースしたい。ちょうどその頃、コープさっぽろがDX・内製化に舵を切り、エンジニアを募集していたので、応募しました。
もっとも、当時のコープさっぽろが探していたのは、ゴリゴリのAWSエンジニア。私はアプリケーションエンジニアなので「どうなのかな」とは思ったんですが、蓋を開けてみたら、プロジェクトを動かしてきた経験が重宝される場面もあるようでした。何より、自分でクイックに作ってリリースすることが、実際にできるようになったんです。
コープさっぽろは理事長から現場の職員までの階層が少ない組織なので、相談するとすぐ実現できることが多い。金額の大きいものはさすがに難しいのですが、多少の規模なら、かなりのスピードで進められました。
酒井:ITベンダーから移って、一番ギャップに感じるのはどんなところですか?
中内:ITベンダーにいた頃は、それぞれの立場があり、踏み込んで言いづらいところがありました。遠慮したり、考え続けたりした結果、いい提案ができなかったこともあったと思います。それがコープさっぽろでは、主体性が自分のほうに移ってきました。
ただ、主体性を持つことと、自分の考えを押し通すことは違います。そういうシステムは、独りよがりになって大抵失敗するんです。使う人の顔と気持ちを知らないと、システム導入は意味がないと思っています。
酒井:2026年6月に、執行役員に就任されました。ご自身の中で変わったことはありますか。
中内:変わったのは、肩書だけです(笑)。いっぱい失敗すると思いますが、やらないで後悔するくらいなら、やってみる。図々しくいこうかなと思っています。
酒井:実は私、『ルポ 日本のDX最前線』(集英社インターナショナル)という自著で、2020年にDXを始めたばかりのコープさっぽろを取材したんです。そのときの印象で残っているのが「みんな本当に変革を楽しんでるな」と。基幹システムの刷新って、ともすると悲壮感漂う話になりがちで、しかも50億円かけても未完のシステムについての取材だったのに、夏の北海道みたいにすごくカラッとしていました。あの空気は、今も変わりませんか?
中内:変わらないですね。私たちデジタル推進本部には、現場と関わるのが好きな人が多いんです。私もそういうタイプで、入協してすぐに、システム導入の準備でエンジニアや当時の上司と店舗で棚卸しをやったのもいい思い出ですね。新しい発注システムを導入するにあたって、試験運用していた店舗の在庫を正確にデータへ載せる必要があって。土日かけて、納豆やヨーグルト、冷凍食品の数をひたすら数えました。
酒井:その様子が目に浮かびます。前任の長谷川さんさんからはどんなことを学びましたか?
中内:私が苦手だったことで言うと、交渉術ですね。まずは、適正価格にすること。世の中の相場を知らないと、その判断はできません。そして、本当にやるべきことは何かを見極めること。ITベンダーさんは、こちらが伝えた要望に対して、素直に提案してくださいます。裏を返せば、伝える要望がずれていたら、出来上がるものもずれてしまう。だからこそ、ITベンダーさんにお願いする前に、「それって本当は何がしたいんですか?」と、ユーザー部門の本音を掘り下げておく必要がある。そのやり方を、長谷川さんは背中で教えてくれました。
長谷川さんは、何でもズバっと正直に言う人です。私もいつの間にか、「これってどうなんですか」と切り込むようになって、その素直さはちょっと移ってしまったかもしれません(笑)。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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