“武闘派CIO”からバトン受け継ぐ、コープさっぽろの新・デジタル推進本部長が語る「IT民主化」の手応え
第49回:コープさっぽろ 執行役員 デジタル推進本部 本部長 中内愛さん
47社のサプライチェーンを堅牢に。「意識させない」セキュリティ
酒井:近年はセキュリティ攻撃が巧妙化しています。グループ1万5000人規模のセキュリティ対策はどのように進めているんですか?
中内:2020年の初め頃にクラウドへ移行して、標準的な構成に変えたり、生成AIを使ったセキュリティソフトを入れたりと、できることが一気に増えました。今は約4,000台の業務端末を、各種セキュリティソフトで守っています。大事にしているのは、セキュリティを意識させないこと。忙しい現場の皆さんに「あれをして」「これはしないで」と求めても守り切れません。本人が意識しなくても守られている状態をつくっておきたいんです。
酒井:今後、セキュリティで強化したいことはどんなことですか?
中内:いざインシデントが起きたときの体制です。最近のサイバー攻撃を見ていると、明日は我が身だと怖くなって、頭の中で何度もシミュレーションするようになりました。方針ははっきりしていて、検知したらまずせき止め、被害を最小限にすること。そしてもう一つが、いざというときに頼れる仲間をどれだけ作っておけるか。パートナー企業の皆さんも、私たちにとって大事な仲間です。
特に意識しているのが、サプライチェーン全体の守り。まずは、グループ47社それぞれの入口を堅牢化しています。今は、生成AIで手軽にシステムが作れる時代ですから、その手軽さが、新しい入口にもなり得ます。不安を挙げたらキリがありませんが、それでも今できることは何かを常に頭の片隅に置いておくことが大事だと思っています。
酒井:生成AIの活用も進んでいますか?
中内:少しずつ広がっています。ここ2年ほどは、学習会でもGeminiやNotebookの使い方を扱うようにしました。本部の職員が提案資料や調査資料に使うほか、現場ではPOPを作ってみたり、組合員さんからのお問い合わせへの回答文をGeminiで下書きしたり。普段から組合員さんと接していても、書き言葉にするのは苦手という方は多いんです。中には、回答を蓄積していって、その中から妥当な答えを引き出せるところまで作り込んだメンバーもいます。
ただ、現場からすると「入力した情報が学習に使われるんじゃないか」「漏洩したらどうしよう」という不安があって、どこまでAIを使っていいのか判断がつきません。だから、線引きははっきり示すようにしています。ある程度の線引きをして、ここまでならアプリを使っても大丈夫。でも、個人アカウントで使うのはだめですよ、と定期的に周知しています。

「地方は課題から生まれる」道内コミュニティに懸ける想い
酒井:中内さんは、組織内だけではなく、北海道のエンジニアコミュニティでも活躍されていますね。
中内:AWSのユーザー会「JAWS-UG札幌」に参加したり、Google Cloudのユーザー会「Jagu'e'r」では北海道分科会の運営を務めたりしています。Google Workspaceは道内にも利用者が多いはずなので、みんなが知恵を持ち寄れる場にしたいです。
課題は、地方からこそ生まれると思っています。人が足りなくなる前提で、これまでのやり方をどう変えるか。何をやって、何をやめるか。その判断を迫られる場面は、都会よりも地方の方がずっと多い。もちろん、北海道のやり方がそっくりそのまま他の地域にも当てはまるとは限りません。それでも、共通する課題や解決法は必ずある。だから、北海道でいい事例を作れれば、きっと他の地域の力にもなる。そう信じて、やっています。
こぼれ話:商品にも、売り場にも コープさっぽろの遊び心
酒井:取材でコープさっぽろのお店にお邪魔したときに衝撃だったのが、売られているお魚がとにかく大きいことと、プライベートブランド(PB)商品の美味しさなんです。最近のコープさっぽろのイチオシ商品を教えてください!
中内:まずは、PBの新作「粒かりんとう」です。原料は、ほぼ北海道産です。もう一つは、旭川に近い東川町のゆめぴりかと、PBの「北海道100丸大豆醤油」で作ったお醤油せんべい。どちらも今人気です。
売り場も、店舗ごとに、いろいろ遊びが効いているんですよ。商品サンプルでトドック(コープさっぽろの公式キャラクター)の形を型取ったカレーを作ってみたり、ライトノベルのタイトルみたいな商品名が付けられていたり。たとえば「手羽元を生姜醤油に漬けた。そして、煮た。」や、「本日焼きました。こちら牛ヒレステーキです。」といった具合で(笑)。実はこれ、コロナ禍で試食ができなくなったときに始めた工夫なんです。そうしたら、売り上げが伸びた商品もあるんです。
酒井:商品にも、売り場にも遊び心が息づいているのが、コープさっぽろらしいですね。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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